【男主】unità difettoso！【APH】

15話 ページ17

死んだな、なんて本気で思った。
こんなふうに巻き込まれることは今まで無かった訳ではない。だが今は人目につかない場所だ。今度はもう助からない。
経験豊富な割に俺は道具が無ければ戦えやしなかった。大体刀も銃もめちゃくちゃ上手いわけではないので、武器があっても状況は変わらなかったかもしれないが。
走馬灯のように様々な記憶が走り抜けてゆく。俺のたった一人の兄貴、そして大好きな友人たち、懐かしい故郷、あとは…まあろくな思い出がある訳ではなかったが、今まで楽しかったよ、ありがとう。

腹めがけてその鋭い銀色の刃は真っ直ぐ勢いよく振り降りてくる。

兄貴、また来世で会いましょう。

恐怖よりも安らかに眠る覚悟が先立って、俺がぎゅっと目を瞑ったその時だった。



｢よっしゃ、ビンゴだぜ！｣



あっという間の出来事だった。
聞いたことのない声が頭上から辺りに響いて、一気に混乱が頭を支配する。どさりという音と共に耳を裂いたのは、小さな銃声。俺の隣には何かが降り立った衝撃があって、硝煙の臭いが漂う。
何が起こった、何が。
一瞬の出来事に全く付いていかない頭を置き去りにして、俺はゆっくりと、恐る恐る目を開いた。

力強く閉じたせいか一瞬揺らぐ視界も、徐々に辺りの様子を捉え始める。
まず初めに目に入ったものは、倒れた男であった。



｢……え、なん、で。｣



身体を立て直しながら、先程まで俺の上に立ちはだかってナイフを突きつけていたはずの男が、いつの間にやら体をぐってりとさせてそのまま真横に倒れていることを確認する。どさりといった音はこいつが倒れた時のものか。
夜だが目はよく冴えていて、だから俺はその男の頭から流れた赤い液体にも気付くことができた。血だ。
｢ひっ｣と小さく悲鳴をあげて後ずさる。いつだって血は好ましいものではなかったし、この様子からするにこの男は死んでいる。
俺は先程聞いた誰かの声を思い出した。この場に第三者が来たはずだったのだ。恐らくそいつにこの男はやられたのだ。



｢ねえ、君大丈夫？立てる？｣



その時、全く状況の整理がつかない俺の背後からするりと手が伸びてきて、そう訊いた。身体はびくりと震えたが、どうやら俺を助けてくれたらしい。
ゆっくりと声のした方へ顔を向ける。
そこには薄暗い中でもよく分かるほどの白い肌を持った茶髪の青年が眉を心配そうに曲げて立っていた。見たほどにまだまだ若い年の男であった。

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