【男主】unità difettoso！【APH】

12話 ページ14

｢兄ちゃーん、そっちはどう？｣

｢他と一緒だよ。バラバラになっちまってるぜ。｣



目の前に広がっている異臭を放つそれに、俺と兄ちゃんは揃って顔を顰めた。所々傷んできてはいるけれど、これは間違いなく人間だったものである。バラバラに刻まれた死体をじっくりと観察していく姿はなかなかに異様で、ここが路地裏でよかったと場違いな安堵をした。俺たちは警察ではないのだけれど。

ヴァルガスが代替わりをしたのはここ数年ほどのことだ。色々な引き継ぎや後継者争いがあったものの、なんとか今は直系の孫である兄のロヴィーノと弟のフェリシアーノの2人がボスということで落ち着いている。代替わりしようとその力は衰えることを知らない。

フェリシアーノは惨殺された死体を眺めながら、｢今月何件目だっけ｣とぼんやりした頭で考えた。

街で金狙いの殺人が起き始めたのは三ヶ月ほど前からだ。それは一番最初の事件から段々と程度を増してきた。
狙われるのは裏も表も関係なく資産家や政治家、商人など金を持つ人間ばかりで、犯行現場からは必ず財布が消えていることから金目当てなことは分かっていたのだが、厄介なのはどうやら愉快犯でもあるらしいことだった。なぜなら、死体は必ず見るも無残な形となって発見されるからで、どれもがおよそ考えつかないような殺され方。
兄ちゃんは｢こりゃ途中で目覚めたタイプだな、胸糞わりぃ｣と言っていたけど、いずれも刃物1本での犯行、狙われた人間の中にはその日ギャンブルで一山当てた者も含まれていることから計画的な犯行ではないと推察する。飯屋などで羽振りのよかった客が狙われたようだ。
何故俺たちが警察に代わりこんな事件の捜査をしているのかといえば、被害者の中にうちの組織の人間が居たからに他ならない。

ほんと面倒なことしてくれたよね、お前。

部下の死体が見つかった時、俺はそう言っていた。
身内がやられたなら落とし前はつけなきゃならない。泥を塗られたなら尚更。それは組織のルールでもある。だから警察からこの件を引き受けたのだから。
仮にもうちのファミリー構成員なら、これくらいは自分でなんとかして欲しかったのは俺個人の意見だ。

目の前にある死体は有名な政治家のモノだ。
さすがにこれ以上この件を長引かせるのも不本意であった。



｢兄ちゃん、俺に考えがあるんだけど。｣

｢あ？なんだよ。｣



兄に耳打ちをすれば、俺の意見に乗ってくれた。
鼻腔には曲がるような悪臭が届いていた。

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