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「え、ラーメンあんじゃん! 激アツ!」
学校を出て、駅とは反対方向に歩き出した。目的地も地図アプリも開かずに歩き出した菊池くんに、とりあえずついて行く私。
1年以上通ってるのに、こっち側は初めて来た。案外お店があるんだ、と周りを見渡していると、立ち止まった菊池くんが嬉しそうな声をあげる。
「煮干しラーメン」
「えー、美味そう」
チェーン店ではなく個人営業の雰囲気のラーメン屋さん。看板にはオススメメニューがチョークの手書き文字で書かれている。
「葉月さん、ラーメン好き?」
「うん、好き」
「入ってもいい?」
真剣な表情でメニューを読んでいた菊池くんがキラキラした目でこちらを見た。予想通りの提案に良いよ、と笑うと彼は迷いなくお店の引き戸を開ける。
「いらっしゃい!」
店内は木目調で暖かい雰囲気だった。冷房が効いていて、暑かった体がだんだん冷えていく。
高校生2人組の客に一瞬驚いた表情を浮かべた店員さんは、すぐに4人がけのテーブル席へと案内してくれた。夕方にはまだ早い時間だからか、客数は少ない。出されたお冷は冷たくて美味しかった。
「何にしよっか」
壁に添えるようにして立てかけられていたメニューを横に広げた菊池くんが、楽しそうにページを捲る。
塩、醤油、豚骨……定番のメニューが並んでいる。あんまりこってりしたものだと晩ご飯が苦しいかもしれないし、あっさりめの物にするべきだろうか。
「塩かな」
「俺豚骨。で、チャーハンとギョーザ」
「えぇ!? 入る!?」
「ヨユー」
野球部みたいな頼み方をするな。思わずまじまじと菊池くんを見てしまう。確かに細くはないけど、昼ご飯だって食べたのに。
「こんなもんだよ、男なんだから」
「そっかぁ……」
感心していると、菊池くんが店員さんを呼んで注文してくれた。学校の話をしているとすぐに運ばれてきたラーメンは、とても美味しそう。
「やっば! 美味そう!」
「美味しそう! いただきます!」
「いただきます!」
2人で手を合わせてから、一口スープを飲んだ。……美味しい。思わず顔を上げると、同じく左手にレンゲを持った菊池くんが目をキラキラさせてこちらを見ている。
「「超美味しい!」」
目が合って飛び出た一言は全く同じで、ふは、と菊池くんが楽しそうに笑った。柔らかく微笑むその表情に、今朝よりも仲良くなれた気がした。
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ハル(プロフ) - ハッピースクールさん» ハッピースクールさん!こちらも来て頂いてありがとうございます(^^)頑張ります!どうぞよろしくお願いします( ´ ▽ ` )ノ (2021年8月22日 21時) (レス) id: c9566d77ee (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 名無し96398号さん» コメントありがとうございます!全部読んで下さったんですか!?ありがたや…!無理しない程度に頑張ります!のんびりお付き合いくださいね(*^^*) (2021年8月22日 21時) (レス) id: c9566d77ee (このIDを非表示/違反報告)
ハッピースクール(プロフ) - ハルさんのお話大好きで、新作楽しみにしてました。頑張ってください (2021年8月22日 2時) (レス) id: ce9527749f (このIDを非表示/違反報告)
名無し96398号(プロフ) - 勝利くん担でハルさんのお話全て読ませていただいています!今回もものすごく楽しみです、、!無理しない程度に頑張ってください!! (2021年8月21日 23時) (レス) id: 55f375899c (このIDを非表示/違反報告)
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