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思ったより、印象は良くなかったらしい。
「私、岩本さん、取られた、と、」
「え？ なんで！？ 俺、Aしか見てないよ？」
「あの子、なんか自慢話とかばっかりで。たまに出てきた話かと思えば、俺にゴリゴリに寄せてきたジムとかタピオカ屋さんの話ばっかでさ」
「私、そんなの、話した、ことない」
「それはAがいつも取り合ってくれないからでしょ！ …じゃなくて！ 狙ってます感凄くて、うんざりしてたくらいだからね」
そうなんだ。岩本さん、顔に出さなかっただけなんだ、大人だなあ。
なんて考えていたら、嬉しそうな岩本さんの声が降りかかる。
「なに、A、俺に対して嫉妬してくれたの？」
「……しっと？」
「え？ 違うの？ 俺の事好きになったのかと思ったんだけど？」
「岩本さん、のこと。……えっ、と、分かりません」
「本気で、恋、したことない、ので。好き、とかそういうのは」
そう言うと、あ…そうなの、なんてガッカリしたような声色の岩本さん。
勇気を振り絞って、今の現状を伝えることにした。
それで、岩本さんが喜ぶのかはわからないけど。
「い、岩本さんは、私の知ってる、男性、の中では、特別です」
「え？ それは…」
「好き、とかそういうのは、まだわかんなくて、難しくて、でも、怖くない」
「んふ、そっか！」
あ、笑ってる、多分。
恥ずかしくて、岩本さんの胸から顔なんて上げられないけど、何となく声のトーンで伝わった。
とか思ってたら、急に背中に回されてた手が片方消えて、私の顔を上に向かせた。
「俺、アピール辞めないよ？ Aが俺のこと好きってなるように、たくさんアピールするよ？」
俺が好きって何か分からせてあげる、なんて甘い言葉と共に笑いかけられて。
「ちなみに、俺、こんなに気になるっていうか好きな子、初めて出会った。Aは？」
「私、異性にぎゅってされたの、初めてです」
「え？ まじ？ てか、そっち？」
分かんないづくしでトンチンカンな答えを出した。
「あと5分経って、大丈夫そうなら戻ろっか」
車に来てから30分が経とうとしていた。
そろそろ戻らないと、だもんね。
「はい、立て直しますね」
「Aのペースで、いいからね」
岩本さんは、受け入れてくれた上に、優しい人で、魅力的な人だった。
思えばこの時にはもう、怖いなんて思ってた頃の私とは岩本さんの見え方が変わってきていた。
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作者名：なあちゃむ | 作成日時：2022年4月30日 0時
