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「ねえ、なんでAがそんなこと言うの？」
俺、そんなに頭良くねえし、わかんねえけどさ。
なんて彼の言葉に続いたのは衝撃的なひとこと。
「A、男苦手なんだろ？ 俺とも一定距離保ってるし、自販機であった時も、会議室であった時も、どこかビビってたじゃん」
今でもビビられてる自覚はあるけど、なんて付け足されて。
「なんで、それ…」
「誰かに聞いたとかじゃねえから、憶測だけど。なんか怖がるような目してんなって思ってたよ」
「だから、必要以上に距離詰めれなかったし、連絡先も聞けてない」
教えるなら俺が先だろ、なんて冗談なのか分からないトーンで言って口を尖らせてる岩本さん。
「てか、あいつの名前知ってんの？」
「はい？」
「あの、さっきの、あっちのマネの名前」
「存じ上げません」
そう答えれば、あはっなんて特徴的な笑い声が広がる車内。
この人の情緒はどうなってるんだ。
「そんなんあいつ、連絡先聞く以前の問題じゃん！」
ひかるなら、大丈夫だよ。待ってくれるし、受け止めてくれるよ。
さっきの深澤さんの言葉が急に思い出されて、今勇気を出すべきかもしれないと感じた。
「岩本さん、私の、昔話、付き合って、くれません、か」
反応が怖くて、俯いたままそう呟けば。
「いいよ。知りたい。」
なんて柔らかい声が聞こえてきて。
「上手く、スムーズに、話せない、かもしれません」
「そのくらい、何時間でも待つし、聞くよ」
その返事に、どこか安心感を覚えて私は自分の昔話を岩本さんに打ち明けた。
「私、地下アイドルをしてたんです」
「みたいだね」
「センターで、シンメ、は、いなくて、」
「センターって大変なのに頑張ったね」
「メンバーはみんな色々なテレビとか、雑誌、とか、ラジオと、か、出てました」
「Aは？」
「わ、私は、出れなくて。その代わり、違う、仕事が、あっ、て…」
「他のメンバーの、仕事取ってくる、仕事でした」
「…は？」
「私、岩本さんが思ってる、ような人じゃ、ないんです」
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作者名：なあちゃむ | 作成日時：2022年4月30日 0時
