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そんな攻防戦を繰り広げていると、突然岩本さんがこっちに歩いてきて。
え？ なんで？ っていうか、割とガチで目が怖い。
その間も距離を詰めてくる相手のせいで私はもう後ろに下がれない位置まで来ていて。
正直、昔を思い出して足が震える。
「あの、もう、本当に…」
無理って言わなくちゃ、なんて覚悟を決めた時、岩本さんが聞いたこともないような低い声を発した。
「Aに何の用ですか」
「あ、マネージャー同士相談できる関係にと思って連絡先交換するだけですよ」
「A、交換するって言ったの？」
「え、あ、いえ」
怖い、怖すぎる。
目も声も、発してる空気も、その奥にいる胡桃さんも。
「Aが承諾してないなら諦めてください。この女、そんな安くないですから」
岩本さんの雰囲気に圧倒されたのか、お相手は直ぐに立ち去ってくれて。
安心したとともに、力が上手く入らなくなった。
「え！？ ちょ、A？！」
焦った岩本さんの声が聞こえるけど、上手く声も出なくて。
ああ、迷惑かけちゃった。上手くやれなくてごめんなさい。
そんなことを考えてた。
「ちょっとごめんな、少しだけ我慢して」
なんて声とともに浮いた私の身体。
後悔の念しか頭にない私は、周りのことなんて考えられてなくて。
気付けば、移動してくる時に乗った車の中だった。
「泣くほど怖かった？」
「すぐに助けられなくてごめんな」
「泣かないでA。俺、どうしていいかわかんねえ」
矢継ぎ早に尋ねられる質問を耳が受け取って、私泣いてるんだ、なんて気付く。
「ごめんなさい」
「え？ なにが？」
「上手く出来なくて。お仕事の可能性潰したかもしれません」
「は？ なんなのそれ」
「私、ちゃんとしとけばみなさんの役に立てたかもしれないのに」
「上手く出来なくて、出来悪くて、ごめんなさい」
そう言えば、車内は静寂に包まれた。
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作者名：なあちゃむ | 作成日時：2022年4月30日 0時
