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5話 ページ5

em.side

「……ショッピ様」

鈴のような心地の良い声が弱々しく震えた。
不安そうにゆらゆらと揺れていた瞳は一層不安を強くして揺れた。彼女の視線の先には、トレードマークであるヘルメットを外し、ふわふわと所々跳ねている髪を掻きながら気だるげに立っている彼女の婚約者であるはずの彼。
その隣には当たり前のように彼の腕に自分の腕を絡みつけて立っているレイカと言うご令嬢の姿もある。

そんな2人の姿を見て、また瞳を揺らす彼女を見ていられなくて、でもどうやって声を掛けていいかも分からなかった。もしここに居合わせたのが自分ではなく、口の上手いオスマンや鬱だったら…なんて思っても状況は何も変わらない。

「何してんすか?2人で」

何かを探るようにすっと目を細めて、いつもの様に素っ気なく放たれたようにも感じるその言葉は、何処か棘のある言葉だった。
彼の先輩である人に向けられるものとはまた違った、彼女に対する圧のような、自分に対しての牽制のような。

「え、えっと……」

やましいことをしていた訳では無い。普段通り、仲間である彼の婚約者に対して声を掛けただけ。疲れているような、何処か元気の無い彼女に紅茶でも飲んでリラックスして欲しかった。ただ、それだけ。
それなのに、彼の鋭い視線の先に居るのは自分ではなく彼女であると言うのに、どうしても自分へ向けられた少しの敵意に動じてしまう。

「少し、お話をしていただけですわ。ショッピ様こそ、どうしてこちらに?」

さっきまでの弱々しい声は何処へやら、彼女は彼の鋭い視線に少しも動じずに、凛として芯の通った声でニコリと笑う。
背筋をピンと伸ばし、ひとらんと同じ、彼等を見据える黒色の瞳は宝石のようで。




(綺麗だ、なあ……)

心の奥深くで、得体の知れない何かが膨れ上がったような気がした。

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秋人(プロフ) - パスワード掛けても公開して下さってありがとう御座います。本当に好きなお話なのでうれしいです。作者様に無理のないように過ごして下さい。 (2022年3月12日 23時) (レス) id: 3a6567d6ac (このIDを非表示/違反報告)
よにん - 前に見かけてまた見たいと思っていてまた見れて嬉しいです。応援してます! (2020年6月24日 15時) (レス) id: 3491a11aac (このIDを非表示/違反報告)
鬼雷 - 初コメ失礼します!少し前に見つけてひっそりと応援しておりました!ストーリーが凄く好きで先が凄く気になります!作者様のペースで頑張ってください!更新されるのを楽しみにしてます!完結まで追いかけます!頑張ってください! (2020年6月24日 0時) (レス) id: 15f01a3427 (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴(プロフ) - 茄子さん» 教えてくださりありがとうございます!!これからも頑張ってください!!他はもう素敵な話ばかりで読み入ります!もしもあったら聞かせてもらいます…! (2020年6月17日 19時) (レス) id: c59a6d75f0 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - りんご飴さん» コメントありがとうございます!ありがとうございます!泣きます(;;) 手首を掴んだのはsypさんです!いえいえ、分かりづらかったかもしれません……。ごめんなさい(;;) 分からないところがあればジャンジャン聞いちゃってください!ありがとうございました(^_^) (2020年6月16日 20時) (レス) id: 8809630e87 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:茄子 | 作成日時:2020年4月6日 21時

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