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39話 ページ39

Aside

『A』



いつか。
まだ小さく、記憶も曖昧だった頃。


貴族とは言えど家計に余裕がある訳でもなく。家族で旅行をするなんてことほとんどなかった。
両親はいつも私の事を一番に考えてくれていた。
私の将来のために、パーティーに出席したり、ドレスを新調したりすることに精一杯。

夜中に、これからどうして行こうか、なんて2人で悩み、話していたことを知っていた。


私のことなど、後回しでいいと言うのに。
私のことが大好きで、大切で仕方ないというような両親に、いつも戸惑っていた。
だけど、そんな両親への感謝は忘れたことがなかった。


そんな苦しい生活の中でも、1度だけ。
1度だけ、家族水入らずで旅行をした事があった。
小さいながらも、嬉しかったからよく覚えている。
両親も楽しそうで、1度もその時のことを忘れたことなどなかった。




『A、約束してね。たとえどんなに苦しくても、どんなに弱くても誰かを守るために強く居なさい』

『その人がどれだけ憎くても、どんなに恨めしくても。絶対に、復讐なんてしてはいけないよ。たとえそんな人でも、困っていたなら助けてあげなさい。きっと、誰かが見ていてくれる。いつか、誰かが助けてくれる』



そう言った両親の後ろ姿を、私は忘れたことはない。




「……はッ、」

悪夢から目が覚めた。
2人が、両親が私から遠ざかっていく夢。

起こした体は汗でびっしょりとしていて、息は荒い。肩は大きく上下していた。
腹の奥底から、黒いなにかがぐんぐんと這い上がってているような気がして。恐怖と、得体の知れない感情で、ぎゅっと掛け布団を強く握りしめた。



「っ、」



ねえ、お母さん。
私はいつだって弱くて、いつだって苦しかったけど。いつだって誰かを守って生きて行こうと心がけていました。

ねえ、お父さん。
私はいつだってあの人が憎くて恨めしかったけど。
あの人を助けようと頑張りました。
何度もあの人が居なければと、復讐してやろうかと考えていました。
だけど私は弱くて、怖くて。
いつだって、我慢して。結局は何も出来ずに。

私は、いつだってその言葉を守って生きてきたけれど。



こんなにも、憎くて、憎くて仕方が無いのに。

ねえ、お父さん。お母さん。
どうか、教えてください。


世界で一番、大切な人を奪われても。
その約束を守らないといけませんか?


復讐を、してはいけませんか。

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秋人(プロフ) - パスワード掛けても公開して下さってありがとう御座います。本当に好きなお話なのでうれしいです。作者様に無理のないように過ごして下さい。 (2022年3月12日 23時) (レス) id: 3a6567d6ac (このIDを非表示/違反報告)
よにん - 前に見かけてまた見たいと思っていてまた見れて嬉しいです。応援してます! (2020年6月24日 15時) (レス) id: 3491a11aac (このIDを非表示/違反報告)
鬼雷 - 初コメ失礼します!少し前に見つけてひっそりと応援しておりました!ストーリーが凄く好きで先が凄く気になります!作者様のペースで頑張ってください!更新されるのを楽しみにしてます!完結まで追いかけます!頑張ってください! (2020年6月24日 0時) (レス) id: 15f01a3427 (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴(プロフ) - 茄子さん» 教えてくださりありがとうございます!!これからも頑張ってください!!他はもう素敵な話ばかりで読み入ります!もしもあったら聞かせてもらいます…! (2020年6月17日 19時) (レス) id: c59a6d75f0 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - りんご飴さん» コメントありがとうございます!ありがとうございます!泣きます(;;) 手首を掴んだのはsypさんです!いえいえ、分かりづらかったかもしれません……。ごめんなさい(;;) 分からないところがあればジャンジャン聞いちゃってください!ありがとうございました(^_^) (2020年6月16日 20時) (レス) id: 8809630e87 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:茄子 | 作成日時:2020年4月6日 21時

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