もう少しだけ貴方と…【文スト】

最初で最後（織田作之助） ページ18

『ねえねえ、織田作さん。


死なないで帰って来てね。』

死ぬのは分かっていた。だから貴方に最初で最後の嘘を付いた。

貴方は偽物(ミミック)との戦いに行って死ぬんでしょ。

私を置いて逝って仕舞う。


それなら貴方に最初で最後の嘘を吐こう。


そう思って言ったけれど、中々辛いですよ。




でも、辛いだけじゃ嫌だから…

『織田作さん、大好きですよ。』

背が高いから、背伸びして貴方の頬に口付けする。



……これもきっと、嫌、絶対最初で最後。

そしたら、貴方も

「嗚呼、俺もAの事が好きだ。…絶対帰って来るから待っていてくれ。」

って、言ってくれました。


だけど、分かってますよ。貴方からこうやって

“好きだ”

って言ってくれるのも、最初で最後だって。




でも、貴方の事が本当に好きで、大好きで辛いんです。




だから最初で最後の贈り物を貴方に渡そうと思います。

『織田作さん、此れをあげます。大事に持っていて下さい。帰ったら花言葉、調べてみて下さいね。』
「……嗚呼、そうしよう。」

渡したのは、紫色のアネモネと勿忘草。

花言葉は貴方を信じてる待つと、私を忘れないで、真実の愛だ。

我ながら矛盾しているなぁとは思うけどこれが本心だもの。

帰って来て欲しい、でも彼は死んで仕舞うから私を忘れないでねって、伝えたいから。


言葉で伝えられ無いと言うのがこんなにも辛いなんて思って無かった。



彼の居なくなった部屋で一人静かに泣く。



最初で最後の彼の事を思って流した涙でした。

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