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｢来たかった場所って……ここ？｣
真っ暗で本来の色や美しさはあまり分からないけど、この潮の匂い。波の音。……海だ。
｢Aさん｣
彼はビニール袋から何か取り出した。それはいつか、ここで遊んだ手持ち花火だった。渡されたものの中身を見ると、入っているのは線香花火だけ。
｢……マッチと蝋燭、ある？｣
｢はい。先程買いました｣
｢じゃあ、やろっか｣
風は穏やかで、火が消えてしまう心配はない。蝋燭を立てて慎重に火をつけた。しばらくしてパチパチと音が鳴り出す。オレンジ色の光が弾ける。
｢……牡丹｣
｢えっ？｣
突然、芥川くんが呟いた。空耳かと思うほど小さな声。
｢……松葉｣
続いて紡がれた言葉に疑問が確信に変わった。それが、いつかの記憶とリンクする。
｢……柳｣
彼の声を合図に、花火の勢いが衰えていく。
｢……散り菊｣
ぽとりと火球が落ちた。芥川くんがゆっくりとこちらを見る。私はなんて声をかけたらいいのか分からなくて、口を噤んだまま静止してしまう。
｢あなたは、いつも僕の知らないことを教えてくれました｣
そんな表情で見ないでほしい。胸がぎゅうぎゅうに締め付けられて、苦しくなってしまうから。
｢任務では知り得ないことを、教えてくれました｣
＿＿それは私も同じだよ。
そう言いたいのに、口を開けば涙が出そうで、ただじっと彼を見つめることしかできない。
｢……好きです｣
息が止まりそうだった。骨の髄まで甘い痺れが走るような感覚に鼓動が跳ね上がった。
｢過去に何があったとしても、誰を想っていても、あなたが好きです｣
何の迷いもない真っ直ぐな瞳。私の知ってる彼は、こんな顔をする子だったっけ。
｢あなたが辛い時も、幸せな時も、傍に居たいです｣
いつも無表情にどこか遠くを見ていた彼が、今は私に切実な想いを訴えかけている。……堪らなく、愛おしい。
｢……私も……｣
絞り出した声は情けなく震えてしまったけれど、それでもちゃんと伝わったのが分かった。
｢芥川くんが好き｣
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さくら餅(プロフ) - 紅玉さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました！無事完結させることができて心底ほっとしております。私は貴方様のコメントにギュンギュンしました！笑本当にありがとうございました！！ (2021年2月7日 15時) (
レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
紅玉 - 完結おめでとうございます！！！！尊いのと可愛いので私はギュンギュンしまくってました！！！！(ギュンギュンとはキュンキュンの進化系です！！！！) (2021年2月7日 12時) (レス) id: 835185f078 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 人虎に会いたい…。 ｂｙ芥川 (2020年12月1日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 厳しいわ。 (2020年12月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ☆天香☆さん» ありがとうございます！！すっごく嬉しいです！文ストはキャラクターひとりひとりが個性的で大好きなので、つい絡ませちゃいます笑コメントありがとうございました！！ (2020年3月12日 21時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくら餅 | 作成日時：2019年10月4日 16時
