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落ちた火玉を名残惜しそうにじっと見つめ続ける彼。不意に静かな声色で愛おしむように言葉を告げた。
｢牡丹、松葉、柳、散り菊｣
風で黒髪が揺れて、凛とした瞳がふわりと細められた。以前彼が私に言った、花が綻ぶような……という表現がぴったり合う。
｢やはり、あなたは博識だ｣
迷子の子供が親を見つけた時のような、不安から解き放たれるようなそんな表情。
こんな優しい顔ができるんだ、と心臓がぎゅうと締め付けられた。
｢これは人から教わったものだもん。芥川くんとほとんど変わらないよ｣
｢それは……あなたの想い人から？｣
思いがけない質問に目を見張った。真っ直ぐ射抜くような視線に、嘘を付ける術を私は持っていない。
｢……うん。そうだよ｣
人の頭は大切なことしか覚えていられない。
私の大切な出来事は全部、織田作が作ってくれた。私の思い出と知識には、ほとんどに織田作が居るんだ。
｢織田作が預かってた孤児の子達と花火するってなって、それで色々調べたんだって。でも結局、子供には難しいでしょ？線香花火の四段階なんて誰も聞きたがらなくて、仕方なく私に教えてくれたの｣
あの時の織田作の切なそうな顔、忘れられないなぁ。今でも思い出してちょっと笑っちゃう。
……それから凄く泣きたくなって、また眠るのが怖くなる。
｢綺麗な思い出でも、思い出すとやっぱり苦しいの｣
｢……｣
｢ごめんね、ちょっと重かったね｣
慌てて謝ると芥川くんは何か言いたそうに唇を引き結んで、それから俯いた。
｢……塗り替えることはできませんか｣
｢え？｣
｢僕が、あなたの思い出を塗り替えることはできないのですか｣
切実な思いだった。何より目が真剣で、それでいてどこか悔しそうだった。
｢塗り……替える｣
｢忘れられないものは、塗り替えてしまえばいい。白に戻れない色ならば、それよりも濃い色を重ねてしまえばいい｣
｢……そう、ね。今は……ちょっと難しいけど｣
白に戻らなくてもいい……忘れなくていい。
その言葉は、必死に思い出を消し去ってしまおうとしていた私の心にすとんと落ちてきて、膨れ上がっていた風船をパチン、と割ってしまった。
｢僕では、役不足でしょうか｣
｢そんな事ない。ありがとう｣
眉間を緩める優しい表情に、隠れていた……隠していた想いが、割れた風船の代わりにふわふわと浮かび上がった。
私、どうしようもなく彼のことが……好きだ。
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さくら餅(プロフ) - 紅玉さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました！無事完結させることができて心底ほっとしております。私は貴方様のコメントにギュンギュンしました！笑本当にありがとうございました！！ (2021年2月7日 15時) (
レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
紅玉 - 完結おめでとうございます！！！！尊いのと可愛いので私はギュンギュンしまくってました！！！！(ギュンギュンとはキュンキュンの進化系です！！！！) (2021年2月7日 12時) (レス) id: 835185f078 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 人虎に会いたい…。 ｂｙ芥川 (2020年12月1日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 厳しいわ。 (2020年12月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ☆天香☆さん» ありがとうございます！！すっごく嬉しいです！文ストはキャラクターひとりひとりが個性的で大好きなので、つい絡ませちゃいます笑コメントありがとうございました！！ (2020年3月12日 21時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくら餅 | 作成日時：2019年10月4日 16時
