23 〜芥川龍之介side〜 ページ24
無意識だった。
普段、時計が嵌めてある左手首を無意識に掴んでいた。思っていたよりも華奢で……思っていた通りに柔らかな感触がした。
触れていた手のひらが温かい。その温もりを辿るようにじっと手のひらを見つめていると、近くにやってきた中原幹部と目が合った。
「よっ」
片手に持っていた手持ち花火を分けてもらった。これは妹が言っていた……線香花火というものなのだろう。
直ぐに火が消えてしまい、なかなか扱いが難しいらしい。
「……あの、これ」
僕には上手くできる自信が無い、と言いかけたが、分けられた花火がちょうど二本なことに気が付いて口を噤む。
気を回してくれたのだろう。正直、僕には何故この人も太宰さんも協力してくれるのかは分かりかねるのだが、せっかくの厚意なので受け取っている。
「芥川くーん!」
太宰さんやボスとの話を終え、あの人が走って来る。
子供のようにはしゃぐ姿は、いつものあの人の表情よりも幼く見えて落ち着かない。
「頑張れよ」
肩を叩かれ、中原幹部は太宰さんの所に行ってしまった。また……二人きり。
「あれ?中也さん行っちゃったの?」
頷くとそっかー、と無邪気な笑顔で返される。
「それ、線香花火!」
「……は、はい」
「やろう!」
普通の花火よりも慎重に火を付けたのが見て分かった。やはり難しいのだろう。
「知ってる?線香花火には、四つの過程があるんだよ」
静かな空間を破って、ソプラノの声が鼓膜を揺らした。
「牡丹」
声にあわさって小さな光が灯る。
「松葉」
次に、勢いが増す。パチパチと弾ける音が激しくなり、引き寄せられるように視線が光を追う。
「柳」
飛び散るように咲いていた火花と音が落ち着いて、明るかった周りにスっと影が差す。
「散り菊」
ふっ、とオレンジ色の光がパラパラと消えていった。
なんとなく余韻が残り、落ちて消えた火の玉を探していた。
「初の線香花火はどうだった?」
「……良い、ものですね」
「うん!良かった!あ、そう言えばあと一本残ってるね。やっちゃおうか」
いたずらっ子のような表情を覗かせて笑ってみせた彼女が、線香花火を手渡してくれる。
「……点いたよ」
牡丹が終わり、松葉の途中。
「あ、」
突然、風がぶわりと吹き荒れ、ぽとんと火の玉が落ちてしまった。
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さくら餅(プロフ) - 紅玉さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!無事完結させることができて心底ほっとしております。私は貴方様のコメントにギュンギュンしました!笑本当にありがとうございました!! (2021年2月7日 15時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
紅玉 - 完結おめでとうございます!!!!尊いのと可愛いので私はギュンギュンしまくってました!!!!(ギュンギュンとはキュンキュンの進化系です!!!!) (2021年2月7日 12時) (レス) id: 835185f078 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 人虎に会いたい…。 by芥川 (2020年12月1日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 厳しいわ。 (2020年12月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ☆天香☆さん» ありがとうございます!!すっごく嬉しいです!文ストはキャラクターひとりひとりが個性的で大好きなので、つい絡ませちゃいます笑コメントありがとうございました!! (2020年3月12日 21時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら餅 | 作成日時:2019年10月4日 16時