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「花火?」
「そう!昨年の余りがあるから、やっちゃおうよ!」
当然のように太宰さんは私のお店……もといポートマフィアの敷地内に侵入している。
中也さんはもう諦めたみたいで、一緒に花火セットを持っている。
「あー、いいですけど……」
カレンダーをチラリと横目で見る。困ったように笑ってみると、太宰さんと中也さんは気まずそうに目を逸らす。
それもそのはず。花火をやるにはまだ早い。
だって、まだ六月中旬だ。
「うーん……あと二ヶ月くらい後でもいいんじゃ?」
「いやいや!!花火といったら六月だよ!!ねぇ、中也!」
「あぁ。そうだよな!六月だよな!」
「何か企んでます?……まぁ、でも……いいですよ」
二人の押しの強さに気圧され、渋々承知すると無邪気な子供のような笑顔で喜んでくれた。
「……芥川くん、も来ます?」
私の声に、二人は露骨に反応した。するとクルヨ!モチロンクルトモ!、とロボットのように言葉を発した。
「そうですか……じゃあ、」
「ねぇ、A!」
「はい?」
「芥川くんのことどう思ってる?」
「え……」
目を泳がせながらの質問に、考える素振りを見せながらぐるぐると頭の中で考えを巡らせる。
「……ほっとけない、可愛い後輩?ですかね」
熟考して出た答えは、妥協案。
嘘ではないけど、ハッキリそこに落ち着く訳でもない。モヤモヤする。
「……おい、太宰」
「分かってる」
二人が何か話をしているけど、声が小さすぎて聞き取れない。
……なんだか昔に戻ったみたい。私も仲間だったけど、双黒二人は顔を合わせれば口喧嘩して収まって、また喧嘩。そんな風に二人の世界が確かにあった。
そこには誰も入れない。牽制はできるけれど、二人の世界には二人だけ。私は入れない。
それが少し寂しくて、どこか諦観していた。
時々やって来てくれる織田作は、そんな二人を遠目に眺めて楽しそうに笑いながら私と言葉を交わしてくれた。
大抵の人は双黒と絡む私を怖がって逃げていくし、話しかけてくることなんて絶対にない。
だから驚いて、どうしようもなく好きになった。
大きく膨らんだ思いは、空気がいっぱい入った風船のように触れるだけで割れてしまいそうだから。
いや、いっそ誰かが割ってくれたらいいのに。なんて。
「じゃあ、今日の夜!花火しようね!」
「手前は来んなよ」
「やだねー」
「うん……楽しみにしてる。太宰、中也」
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さくら餅(プロフ) - 紅玉さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!無事完結させることができて心底ほっとしております。私は貴方様のコメントにギュンギュンしました!笑本当にありがとうございました!! (2021年2月7日 15時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
紅玉 - 完結おめでとうございます!!!!尊いのと可愛いので私はギュンギュンしまくってました!!!!(ギュンギュンとはキュンキュンの進化系です!!!!) (2021年2月7日 12時) (レス) id: 835185f078 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 人虎に会いたい…。 by芥川 (2020年12月1日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 厳しいわ。 (2020年12月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ☆天香☆さん» ありがとうございます!!すっごく嬉しいです!文ストはキャラクターひとりひとりが個性的で大好きなので、つい絡ませちゃいます笑コメントありがとうございました!! (2020年3月12日 21時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら餅 | 作成日時:2019年10月4日 16時