中学生アプローチ【佐野万次郎】 (ページ4)

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昼休み、いつものように佐野くんがやって来た。

「Aせんせー！」

「お、来たな...あれ？」

その彼の様子がいつもと違うことに違和感を覚える。

「佐野くん、さっきの授業体育だったの？」

「英語だったけど何で？」

「汗かいてるし顔が火照ってるからさ」

今の気温は22度。彼の着ている制服のカッターシャツで快適に過ごせる温度なはず。でも今の彼は

「確かに今ちょっと暑いかも」

なんて言い出すものだから違和感が確信へと変わった。

「んー、1回熱測ってみよっか」

その結果は予想通りだった。

「やっぱり...」

37.8度と計測された体温計を彼に見せると

「え、まじで？」

熱を出した本人が目をまん丸にして驚いていた。

「ケンチンでも分かんなかったのに、せんせーよく気付いたなぁ」

「まぁ毎日うんざりするくらい君の事は見てるからね...」

「やっぱり俺の事好きなんじゃん、あーこれはもう両想いだわ」

そんな軽口を叩く位には元気な様だが、今日は早退して家で休んだ方がいいだろう。

「はいはい、じゃあ今日はこのまま帰ろっか。帰る準備してまたここに戻ってきてくれる？」

「うわ、すげぇ受け流すじゃん...そういうとこも嫌いじゃねぇけどさ」

私の対応に若干の不満を漏らしながらも彼は素直に教室に荷物をまとめに行った。

彼の担任の小栗先生と佐野くんのご家族に早退させる事を連絡し終えた時にちょうど彼は戻ってきた。

「佐野くん、1人で帰れそう？」

「帰れるに決まってんじゃん」

「ふふ、ごめんごめん」

軽く怒った彼の「馬鹿にしてんの？」と言いたげな表情につい笑ってしまった。

また懐かしい様な不思議な気持ちになってしまった。何でだろう。

「君ならきっと大丈夫だと思うんだけどさ、でもやっぱりちょっと心配だから無事に家に着いたらここに連絡してくれるかな？」

そう言いながら私は佐野くんに1枚のメモを渡す。

「何これ？もしかしてこれってせんせーの携帯番号？！」

目を輝かせ始めた彼に首を大きく横に振って否定した。

「そんな訳ないじゃん、学校の番号だよ」

「なーんだつまんねぇの」

面白くなさげな彼に早く帰るように促す。

「さ！早く帰って家で休みな」

「うん、またね」

「はいさようなら、気を付けてね」

佐野くんが帰る姿を窓から見送っていると、彼が私に気付いたみたいで手を大きく振ってくれた。