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〈 呼びかた 〉 ページ22

西川side





「パパ、そこのお皿取ってもらってもいい？」






夜ご飯を食べたあと、
後片付けをしとるカウンター越しのあいりが俺に言うた。














"パパ"






あいりが妊娠したとき、
はじめてそう呼ばれてめちゃくちゃ嬉しかったのを覚えとる。




蘭那が産まれてからは尚更
たくさん呼ばれるようになった。












パパって言われるんは
すごく嬉しいし好きなんやけど



あいりには、









２人のときだけ、たまにでもええから
やっぱり"遥輝"て呼んでほしかったり。














「蘭那〜、ママとお風呂入ろ」


「入るー！」







ソファでテレビを見る俺の耳に
そんな会話が聞こえて、



両手でパジャマを抱えた蘭那が
寝室からお風呂場へ駆けていくのが見えた。









その後ろをあいりが歩いて追いかける。















「じゃあパパ、お風呂入ってくるね？」










あ、またパパって言うた。笑






そうそう、こういうときに遥輝って呼んでほしいねんなあ。笑












「遥輝。」


「え？」


「２人んときは、
名前呼びがええんやけどなあ。」










ソファの背に顎を乗せながら伝えると、




少し間をおいてから
あいりは顔を赤らめた。














「ああ、ごめんね？つい癖で…」








俯いて声が小さくなってもうた彼女に歩み寄り、








「なにも今更照れることないやん。笑」












あいりの頰をつまみながら茶化すと、大きな目を少しだけ揺らしながら







「そうやって、敢えて言われると
恥ずかしいんだよ。」






小さな反論が返された。










「遥輝って呼ばれたかったの？笑」


「だって俺、蘭那のパパやけど
あいりのパパやないもん。笑」


「へえ〜笑」









思わず漏れた本音を聞き逃さず、
今度はあいりが俺をからかってくる。















ああ、もうこれじゃあ
俺のほうが恥ずかしいやん。笑











これ以上は と降参する代わりに、
目の前のあいりに口付けて蓋をした。

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