誂えられた異世界人 (ページ6)

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5話ページ6

「本屋で戦闘なんざ無粋な真似はしたくはないから、助かる」

弱みは見せてはいけないそう思わせられる。

「戦闘になったところで、お前が俺に勝てるとは思わねぇしな」

死の外科医は鼻で笑い、私を見下ろす。まるで品定めされているようで不快だ。だが、この男の言う通り私が勝つ可能性は限りなく低いことは確かだ。向こうに戦う気がないのだから、これ以上不毛なやり取りをせず、さっさと本取って、会計済ませて、この場を離れるとしよう。

しかし、脚立の方へ駆け寄ると、脚立はネジ自体が折れて、使い物にならなくなっていた。老朽化も激しかったし、仕方がないことだろう。

「壊れちゃったね。キャプテンがぶつけたから」

シロクマがそうポロリと言葉を溢すと、死の外科医はシロクマをキッと睨む。

「あ…すいません」

味方してくれた感じだったのに、一瞬にして手のひらを返された。見捨てられたようで少し悲しい。

脚立なしでどうやって取ろうかと考えていると、死の外科医に声をかけられる。

「チッ…おい！どれだ？」

「？」

舌打ちには驚いた。だが、どれって何の話なのだろうか。

「壊したのは俺だ。だから、代わりに取ってやると言っている」

「1番上の棚の左から5冊目…」

「ベポ」

「アイアイ！」

そこからは速かった。ベポが店の奥から脚立を取ってきて、それに登り、サッと本を取ってしまう。そして手渡された。一体どんな心境の変化なのか…私にはサッパリだ。

「よかったね」

シロクマの言葉に私はコクっと頷くことしかできなかった。