* ページ10
なんとなく、吸い寄せられるように病室に行った。何故か部屋は片付けられていなかったが、これから片付けるらしい。
すでに坂田くんの荷物などは引き取られたそう。棚には何も入っていなかった。
なんとなく見とくのも嫌だったので看護師さんのお手伝いをした。
シーツを取ったら、その下にノートがあった。表紙には「Aへ」と書かれていた。粋なことをする。
あらかた片付け終わり、その部屋で読むことにした。
表紙を開けると千切られた跡がたくさんあった。残っていたページは少ししかなかった。
そこに綴られていたのは毎日の私たちの会話や行動だった。でも、そこに登場したのは余命僅かな主人公とどこか冷めた彼女だけだった。
馬鹿なことばっかり話してるな、と思いながらペラペラとページを捲っていく。
最後のページだった。
そこには、日付が書いていなかった。
代わりにこんなことが綴られていた。
‹今までありがとうな、A›
‹大好きやで›
‹でも、俺を嫌いになって›
‹絶対やで›
‹ほんで、嫌いになれたらこのノート燃やして›
‹いつまでも悲しんどったらあかん›
‹A、泣き虫やから›
‹じゃあね。さよなら。ありがとう›
ページの一番下には、薄く書かれた跡が残っていた。
‹ほんまは寂しかったよ›
涙腺を崩壊させるには十分だった。
この8行には、彼の優しさと思いやりと愛がこれでもかと込められ、最後の1行には、彼の本音が溢れていた。
私は彼に、何もできなかったのに。
彼は私に、嫌いになりきれないほどの愛をくれたのに。
私は坂田くんに寂しがらせてしまっていたのに、それにすらも気づけなかった。
いや、気づいていないふりをしてたのかもしれない。
でも、これが彼の望みなら、捻くれた私は君を嫌いになるよ。
だってそれが、貴方の望む最後のわがままだから。
嫌いになれば、このノートを燃やせば、きっと私は坂田くんのことを鮮明に思い出せなくなる。
だから、これが本当のお別れだ。
私はそのお別れが愛しくて、悲しいよ。
この
ね、坂田くん。
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あゆ(プロフ) - どのお話も切なくて、思わず1話読み終わる事に泣いてました…w最高でした!ありがとうございます…(´;ω;`) (2019年7月25日 21時) (レス) id: e76134e0bd (このIDを非表示/違反報告)
夏々 - まふくん……悲しすぎる(;_;) (2018年11月22日 23時) (レス) id: ca7b93074f (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり - かのこゆりです!天使病のお話を書かせていただきました。お褒めの言葉、ありがとうございます!緊張していたのもあり、正直あまり自信がなかったのですが、そういっていただけて嬉しいです。読んでくださり、本当にありがとうございました! (2018年11月22日 4時) (レス) id: 459f75f8c6 (このIDを非表示/違反報告)
sera(プロフ) - ぬこさん» 坂田さんの小説の作者、seraです。私の書いたものが良かった、と書いてくださったのでコメント返しさせて頂きます。そう言ってくださりありがとうございます。これからも私含め、他の作者様のこと、応援よろしくお願い致します! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 28f01b04a4 (このIDを非表示/違反報告)
ぬこ - 凄く感動しました。特に、坂田さんの入院(?)のやつと、まふまふさんの天使病のやつです。めっちゃ泣きました!これからも頑張ってください! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 4fbcbbbe7e (このIDを非表示/違反報告)
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