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そのメールが来たのは飛行機が墜落して炎上する十数分前で、君からの最後のメールだった。

震える手でメールを開いた。

「愛してる。」

たった五文字、でもそこにどれだけの思いが隠されているのだろう。

不思議と涙は出なかった。けれども深い喪失感が僕を襲って、目を閉じた。


目が覚めた。ぼんやりとした意識の中
薄らと目を開けた。

「おはよう、センラくん。」

「A……?」

「うん。そうだよ、」
夢を見ているのだろうか、君がまた目の前にいるなんて。

「センラくんがあんまり悲しそうにしてるから、死にきれなくて困っちゃった。」

窓に腰掛けながら笑う君は、確かに透けていて
いつも着ていたワンピースが風に揺れた。

「なんてね冗談。今日はこれを返しに来たの。」
手に乗せられたのは棺桶に入れたはずの指輪で
思わず声が出た。

「頼むからいかないで、僕のそばにおってよ」
彼女の肩を掴もうと伸ばした手はすり抜ける。

「もう、私はセンラくんのそばにいられないから。」
そう言って目を閉じた後、彼女は泣きながら笑った。

「ずっと、センラくんだけを愛してる。」
そう言って彼女は僕にキスをした。

嫌だ、まだ離れたくない。いかないでくれ、
僕を置いていかないで。

少しずつ視界がぼやけて涙が頬を伝うと共に
僕は意識を手放した。

握っていた右手を開くと、指輪が落ちた。
開きっぱなしの携帯に表示されたままのメール。

「夢じゃなかったんやな、A。」

写真立ての中で笑う君を見つめた。
きっと僕はきみを忘れられないまま
生きていくのだろう。

今日も、明日も。

After words *→←*



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設定タグ:歌い手 , 大型コラボ , 短編集   
作品ジャンル:恋愛
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あゆ(プロフ) - どのお話も切なくて、思わず1話読み終わる事に泣いてました…w最高でした!ありがとうございます…(´;ω;`) (2019年7月25日 21時) (レス) id: e76134e0bd (このIDを非表示/違反報告)
夏々 - まふくん……悲しすぎる(;_;) (2018年11月22日 23時) (レス) id: ca7b93074f (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり - かのこゆりです!天使病のお話を書かせていただきました。お褒めの言葉、ありがとうございます!緊張していたのもあり、正直あまり自信がなかったのですが、そういっていただけて嬉しいです。読んでくださり、本当にありがとうございました! (2018年11月22日 4時) (レス) id: 459f75f8c6 (このIDを非表示/違反報告)
sera(プロフ) - ぬこさん» 坂田さんの小説の作者、seraです。私の書いたものが良かった、と書いてくださったのでコメント返しさせて頂きます。そう言ってくださりありがとうございます。これからも私含め、他の作者様のこと、応援よろしくお願い致します! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 28f01b04a4 (このIDを非表示/違反報告)
ぬこ - 凄く感動しました。特に、坂田さんの入院(?)のやつと、まふまふさんの天使病のやつです。めっちゃ泣きました!これからも頑張ってください! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 4fbcbbbe7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:参加者一同 x他1人 | 作者ホームページ:  
作成日時:2018年11月20日 22時

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