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Aのことを考えるたびにズキズキ痛む背中の羽。
今までの毎日が、楽しすぎたのかな。最高すぎたのかな。恵まれすぎてたのかな。
なんで、こんなにつらいことが起こるのかわからない。
お願いだから、Aは、生きて…。
「相川さんですか?花咲さんは427号室です。」
「ありがとうございますっ!」
受付で事情を説明すると、部屋番号を教えてもらい、病室へ向かう。
もう手術は終わっているらしい。
早く、早くAに会いたい。
一秒でも早くAのところに行きたいけど、病院だからがまん。
それにしても、「427」って、こんな偶然あるんだね。
「花咲A様」と書かれたプレートがある、427号室のドアを開ける。
「Aっ!」
一、二時間前に笑顔で出かけて行ったはずのA。
頭にはうっすら血がにじんだ包帯が巻かれていて、まぶたは固く閉ざされたまま。
体も傷だらけで、見ていられないほど痛々しかった。
看護師さんから、とりあえず一命はとりとめた、と聞いてほっとする。
まだ、容体が急変する可能性がある重い状態らしいけど、生きていてくれてよかった。
「A、よく頑張ったね。」
そう言うと、つややかなこげ茶色の髪の毛を優しくなでた。
いつも笑顔があふれている顔には、なんの表情もなくて。
なんだか、悲しくなる。
「ごめんね、守ってあげられなくて…。」
僕がAを守ってあげなきゃいけないのに。
熱いものがこみあげてきて、気づいたら涙を流していた。
…泣きたいのは僕じゃなくてAの方なのに。
痛かったでしょ、つらかったでしょ、苦しかったでしょ、泣きたかったでしょ。
ごめんね、ごめんね、本当にごめんね。
Aの痛みに比べたら、僕の痛みなんてちっぽけだよ。
しばらくして、先生がやってきた。
泣きながら謝っている僕を見て、聞いてきた。
「花咲さんの…知人の方ですか?」
「はい…。恋人の、相川といいます。」
「恋人」っていうのはなんだか恥ずかしかったけど、そんなこと言ってる場合じゃない。
「じゃあ、花咲さんの容体について説明しますので…。」
ベッドの隣にある椅子に座って、先生は説明を始めた。
…なんとなく、嫌な予感がする。
もう、嫌なことは聞きたくないのに。
少し覚悟して、話を聞く。
「まず、花咲さんが一番大きな怪我をしているのは、頭です。」
隣で、ベッドに横たわっているAを見る。
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あゆ(プロフ) - どのお話も切なくて、思わず1話読み終わる事に泣いてました…w最高でした!ありがとうございます…(´;ω;`) (2019年7月25日 21時) (レス) id: e76134e0bd (このIDを非表示/違反報告)
夏々 - まふくん……悲しすぎる(;_;) (2018年11月22日 23時) (レス) id: ca7b93074f (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり - かのこゆりです!天使病のお話を書かせていただきました。お褒めの言葉、ありがとうございます!緊張していたのもあり、正直あまり自信がなかったのですが、そういっていただけて嬉しいです。読んでくださり、本当にありがとうございました! (2018年11月22日 4時) (レス) id: 459f75f8c6 (このIDを非表示/違反報告)
sera(プロフ) - ぬこさん» 坂田さんの小説の作者、seraです。私の書いたものが良かった、と書いてくださったのでコメント返しさせて頂きます。そう言ってくださりありがとうございます。これからも私含め、他の作者様のこと、応援よろしくお願い致します! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 28f01b04a4 (このIDを非表示/違反報告)
ぬこ - 凄く感動しました。特に、坂田さんの入院(?)のやつと、まふまふさんの天使病のやつです。めっちゃ泣きました!これからも頑張ってください! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 4fbcbbbe7e (このIDを非表示/違反報告)
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