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たどり着いたところは夜の海。満天の星空が、空に、水面に輝いている。
このまま、この海に沈んでいけば彼女に会えるのだろうか…
でもそれでもし彼女に会えたとしても、きっと許してくれないだろう。
「A……俺さ、君からの手紙を見て…すごい、すごい後悔してるよ。
言いたいことだってたくさんあるのに……もう遅いって…言えないって気が付いて…
それでも、たとえ届かなくても君のことが…Aのことが……好きだよ…!」
返事は何もないけど、俺の声が響いているだけだけど。
言わずにはいられなかった。君が好きだって、そう言葉に出したかった。
この気持ちは何回、何十回、何百、何千…いや、何万回でもいえる。君を想える。
Aには届かないって脳のどこかではわかっているけど。
「すぐには会いに行けないけど、君の分までいろいろなことを見てくるよ。
楽しいことも辛いことも全部乗り切って、最期にはちゃんと君に会いに行くから。
だから、さよならは言わない。だって俺は……俺は!!いつかそこに行くから
そしたらきっと……Aと会えるって信じているから!!」
涙が砂に吸い込まれていくのも気にせず泣き、声を上げる。
俺の叫びに呼応してか、風が吹いた。
―――ずっと待ってるよ。
そう、彼女の声が聞こえたような気がするのは……気のせいだろうか。
それから数か月の時が経った。
あの後俺は無我夢中で詩を書き、メロディーを作り上げた。
Aのことを、思い出を忘れないように。
そうして出来上がった曲が詰まったアルバムが今日発売される。
そのタイトルは――――『それはきっと恋でした。』
アルバムが発売された当日の夜。
評判はどうかな、なんてそわそわしている俺の元に電話がかかってきた。
ディスプレイに表示されたのは…まふ君。携帯に電話なんて滅多にかけてこないのに…
「天月君。」
「まふ君、どうしたの?」
「僕、いつでも話聞くからね?辛かったら話してね?」
「…ありがと…まふ君。」
突然電話が来て何事かと思ったら、彼は泣きそうな声でそう言った。
あぁ、感受性の強い彼のことだから気がついてしまったのだろう…
俺が誰を想って歌った曲なのかを、作り上げた曲なのかを。
大丈夫、俺はもう前を向いて歩き始めることができたから…
例え、死が2人を引き裂いたとしても何度でもこう言える。
「きっと、会いに行くから……大好きだよ、A。」
――End――
【まふまふ】天使になる僕と、僕だけを忘れた君/かのこゆり→←*
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あゆ(プロフ) - どのお話も切なくて、思わず1話読み終わる事に泣いてました…w最高でした!ありがとうございます…(´;ω;`) (2019年7月25日 21時) (レス) id: e76134e0bd (このIDを非表示/違反報告)
夏々 - まふくん……悲しすぎる(;_;) (2018年11月22日 23時) (レス) id: ca7b93074f (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり - かのこゆりです!天使病のお話を書かせていただきました。お褒めの言葉、ありがとうございます!緊張していたのもあり、正直あまり自信がなかったのですが、そういっていただけて嬉しいです。読んでくださり、本当にありがとうございました! (2018年11月22日 4時) (レス) id: 459f75f8c6 (このIDを非表示/違反報告)
sera(プロフ) - ぬこさん» 坂田さんの小説の作者、seraです。私の書いたものが良かった、と書いてくださったのでコメント返しさせて頂きます。そう言ってくださりありがとうございます。これからも私含め、他の作者様のこと、応援よろしくお願い致します! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 28f01b04a4 (このIDを非表示/違反報告)
ぬこ - 凄く感動しました。特に、坂田さんの入院(?)のやつと、まふまふさんの天使病のやつです。めっちゃ泣きました!これからも頑張ってください! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 4fbcbbbe7e (このIDを非表示/違反報告)
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