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序章 ページ1

――あれは。
何もない、暗闇だけが広がっている場所。

そこが一体何なのか、知るすべはない。
自分の知っている場所ではないのだろう、ということだけがわかっている。


――何かが、来ている。

得体のしれない何か、としか表しようがない物体――いや、動物が。
自分の方へ向かってきている。


――これは夢なんだ。
わかっている。こんなバカげた話が現実で起きるわけがないのだ。
なのにどうして。

……怖い。
あまりにも現実的過ぎて、恐怖心を煽られる。




どこか遠くから、自分を呼ぶ声が聞こえる。
あの物体たちなのか、それとも別のものなのかは知らない。

が、確実に自分を呼ぶ声は聞こえている。幻聴ではない。



――これは、夢だ。
もう一度、自分に言い聞かせる。

自分を呼ぶ声を無視して、背を向け――。





「……ちょっと、白鳥さん!?」
はっと目を覚ました。
ああ、そうか。ここは学校で、私は寝てしまっていたんだ。

美琴が顔をパッと上げると、呆れたように見つめていたクラスメートたちが爆笑の渦に包まれた。
どうやら長い間――つまりは授業が始まってすぐに、向こう側の世界に行っていたらしい。

「まったく……」
同じく呆れた顔をしている教師は、自分の担任だった。
「あなたが私を嫌いなことはわかっていたけれど、こうもわかりやすく行動に表すのはどうなの?」
「……すみません」

担任の渡井先生が、再度大きなため息をつく。
「そんなに眠いのなら、廊下にでも立ってて」
「わかりました」

即、返事をしてノート類をまとめて立ち上がると、
「え、い、いや、やっぱ教室で立ってて」
と急にあたふたとする。

そんなに生徒をいびって楽しんでいることがばれたくないのだろうか。
しかし、渡井先生は気づいていないだけで、ほとんどの先生が美琴が渡井先生にいびられていることに気づいている。
そんなことを言うつもりはないけれど。


とりあえず、言われるがままに教室の自分の席で立つ。
誰が見てもわかるくらいに顔をしかめて、渡井先生は授業を再開させた。

*→



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さな(プロフ) - あと、読者の私からすれば行間を開けることや、登場人物の詳しい特徴…または情景描写が使われていたらもっともっと良くなると思います。初めましてのくせに生意気ですいません! (2020年1月1日 1時) (レス) id: d6e98db13a (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - はじめまして。この作品がランキングの上位に入っていたので読まさせていただきました。オリジナル作品は基本的に目を通さないのですが、このお話はすごく先が気になります。 (2020年1月1日 0時) (レス) id: d6e98db13a (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - 名無し24146号さん» コメントありがとうございます<m(__)m>確かにそうですね……人の様子がわからないと内容が分かりにくいということになりますね。意識してみようと思います。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - 十二国記さん» コメントありがとうございます<m(__)m>ええと、アンチスレというのがよくわからないのですが、評価の荒らしというものがあるという事ですか? (2019年2月17日 11時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - めぐっぽいど(偽物)さん» ありがとうございます。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:陰月。 | 作成日時:2019年2月1日 11時

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