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答え ページ8

でもね、と辻井さんは呟いた。
「そんなこと、誰にもできないんだ。だから、野望で止まってしまう。
そのことに、父は死ぬ直前になって気付いたというんだ」
そうなんだ……。

「今、この世界に住んでいる人はそう多くない」
そう言うと、彼は立ち上がる。
「僕は、一度、この世界のことを世間に発表してしまったことから逃げるために、祠に行き、鏡に
全身が映るように立って、祈った。この世界に来て、僕はずっと考えていたんだ」
自問自答する辻井さん。

私もまた、考えていた。
つまり、この世界は、現実世界と並立していた。
完璧だけれど、現実世界はここから見たら逆さまの世界だ。

私の思考は、辻井さんの言葉で途切れた。
「僕方とりついた答えは、”この世界をなくす”ことだ」
え、ちょっと待って!
「そしたら、私たちはどうなってしまうの!?」
慌てる私たちを見て、辻井さんは冷静に言う。


「大丈夫だ。僕たちはちゃんと現実世界に戻れる」
「でもっ……」
このままでもいいじゃないか、と、辻井さんを説得しようとしたけれど、やめた。
彼の瞳は、固い決意とこの世界だけを映している。
もう、彼の心は決まっているのだ。


それならば、私たちはどうすればいい?
「そこにいてくれ。僕のわがままだ、君たちをここに連れてきたのは」
「どうして私たちなの?」
彼は微笑を浮かべて言う。
「ずっと、誰かに聞いてほしかったんだ。そして、自分で決めたかった。
そんな時に君たちが来たから、強引に連れてきてしまった」
この人は危ないな。


そして、彼は何かを早口で呟いた。
次の瞬間、現実世界が反転したのが見えた。
逆さまではない、普通の世界。
「この世界は、あと少しで消える」
辻井さんの言葉に、私たちは身を寄せ合って、目を閉じた。



目を閉じる前に見えた景色は歪んでいた。
空間が揺れる衝撃で出来た、この世界を創り上げていたものが崩れだす。

*→←*



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陰月。(プロフ) - 花夢あかりさん» コメントありがとうございます<m(__)m>枯れた月、終わる世界が正直、一番ネタが重いのですが、あれも読んでいただけたのですね。 (2018年8月7日 18時) (レス) id: 6b87a378ce (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - ナナさん» コメントありがとうございます<m(__)m>いえいえ、私はそこら辺にいる普通の人間ですよ。作品大好きと言っていただけて嬉しいです、ありがとうございます! (2018年8月7日 18時) (レス) id: 6b87a378ce (このIDを非表示/違反報告)
花夢あかり(プロフ) - 枯れた月、終わる世界と同様、内容が濃くて面白かったです。素晴らしいお話をありがとうございます (2018年8月1日 14時) (レス) id: 85985c784f (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - これが初投稿ですか?化け物ですよ(いい意味で)訴えかける描写が素晴らしいです!応援してます、作品大好きです! (2018年7月28日 16時) (レス) id: da0149ea12 (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - 夏鳥さん» コメントありがとうございます<m(__)m>うまく言葉にできないのですが、夏鳥さんの解釈に近いです。 (2018年6月24日 15時) (レス) id: 6b87a378ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:陰月。 | 作成日時:2018年1月14日 16時

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