黒猫は幸せを届けたい (ページ15)

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14個目ページ15

｢あ、居った！｣
スナイパーとしての仕事に向かったご主人を見送り、もう一眠りでもするかなと部屋に向かって歩いていると、ふわふわの水色の髪にぐるぐるの瓶底メガネがトレードマークのチーノくんが、それはもういい笑顔で駆け寄って来た。面白そうな気配を察知

『みゃあ』

｢あんなぁくろみつ〜！この前適当にポーション弄ってたら変なやつ出来てん！やからショッピ誘って遊ぼうや！｣
さっきよりも悪い笑みを浮かべながら私を抱き上げるチーノくんの腕の中で、拒否権無いのかぁと思いながらも楽しそうな提案と、背を撫でる大きな手に絆されたなんてそんな(目そらし)

そしてチーノくんの腕に抱えられたままやって来たのは、彼の主な仕事場である醸造所。
普段はツンとした臭いが嫌で近寄らなかったが、今日は草を干したいい匂いになっていて嫌な感じはしない。

『なぁん』

「ん？あぁ、今日は臭ないやろ？
くろみつと遊ぶ為に昨日から換気しといてん！」
ポーションを作った後とか、作ってる最中とかこの離れにくろみつが来んくてちょっと悲しかったとか、最近ずっとショッピとか大先生と一緒でおれと遊んでくれへんかったとか、思ったよりも上手く調合出来んくて凹んでたとか。
そんなんが色々重なって酒に逃げようかと思ったけど、そんなんしたらもっとくろみつが来んくなるからいっその事どストレートに誘ってみたら、案外ノリ気で内心ホッとする。ホンマに嫌な時はスルッと腕から抜け出してどっか行ってまうからなぁ……。

なんて思いつつ、ショッピが居るであろう彼の自室を訪ねる。

｢おーい、ショッピ〜！｣
『みゃ〜う！』

ゴンゴンと考え無しに厚い扉をノックすれば、少しくぐもった部屋の主の声が聞こえてきた。
どうやら作業中らしく、手が離せんから勝手に入ってええらしい。それならとくろみつを抱え直してドアノブを捻れば、床を汚さんように敷かれたブルーシートとその上に散らばる大小様々な部品と、その中心で作業するショッピが手元に視線を落としたまま声を掛けてきた。

「急にどうしたんチーノ」
「失敗したポーションで遊ぼ思って、どうせショッピも暇やろ？」
『にゃあ！』

しゃ〜ねぇなぁ！と言いつつも手早く部品を纏めて片付けるショッピと、よう分からんから手伝う訳にもいかずそれをじっと見ていたら、くろみつが腕の中から飛んで降りたから
「邪魔したあかんで」と声を掛ければ返事が返ってきた。

……やっぱり俺らの言葉理解しとるよなぁ