三十一話『謀ることなかれ』 ページ31
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竈門くんは未だ岩に刀をぶつけている。
僕はその後ろで刀を握ることしかできないでいる。
もう何日、何週間、何ヶ月経っている。
竈門くんは岩を斬れないでいる。
俺は岩なんてアニメのキャラクターじゃないんだから斬れるわけないだろ……と内心思いながらも鱗滝さんに教わった型で刃を岩に叩きつけてなんてことなかったかのように斬れてしまった。
もはや一発。
そしてこれがいけなかった。
まだ竈門くんは岩を斬れていない。
俺が岩を斬った時に竈門くんは丁度俺の真後ろにいたのだ。
確実に見られたといっていい。
今、俺の中には無秩序な罪悪感がある。
竈門くんが岩と対面し、早半年。
未だ斬れていない岩はそこに堂々とあり、俺は竈門くんに先に行っていてくれて構わないといつもの炭治郎の笑顔で言われて、その時の竈門くんの表情が少し寂しそうに見えて、つい嘘をついてしまった。
「まだ修行が足りないから、型も全てできるかわからないからもう少しだけここにとどまるよ」
「!…そう、ですか」
竈門くんはそれ以上何も言わなかった。
実のところ俺はみんなの話していることは全て知っている。
別に察しは悪くはないのだ。
鬼殺隊という隊に入りたいか、入りたくないかでいうと俺はよくもわからん鬼を狩るためだけの団体になんか入りたいと思わないだけだ。
ただ帰りたい。でもそれは無理。
なら、住まわせてる分、粉骨砕身恩を返し通すのが当たり前なのではないか?と考えて嫌々とまで言わないが、億劫には思いつつ刀を手に取った。
竈門くんは今日も岩と対面する。
最近時々泣きそうな顔で歯を食い縛ってるのを俺は見つからないように木に隠れてフォローを考える。
結局何も言えずに俺が出てくると何事もなかったかのように笑顔で話しかけてくる竈門くんは根っからのお兄ちゃん気質なんだと思うが、頼れば少しは楽になるのにな…なんて、早々に最終選別に行けてしまえる俺が言える立場じゃない。
鱗滝さんに教わった時期は同じ、俺よりも竈門くんの方が鬼殺隊に入りたい動機がちゃんとしている。
妹のため、見るも無残に散った家族の仇のため。
それに比べて俺は現代にいた頃と何も変わらず夢も希望も何も持たず流れて巻き込まれて、それに身を任せている。
羨む出自でもなんでもないが、少し、いいなと思うときもある。
俺は今日も炭治郎を背後から密かに見ている。
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三十二話『あの人の目は綺麗なのだろう』→←三十話『無意識、無自覚、無反応。』
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空太郎(プロフ) - smowさん» 続きすごく遅くなってすみません!あとコメント遅くなってすみません。コメント嬉しいです。ありがとうございます┏( .-. ┏ ) ┓ (2019年11月28日 22時) (レス) id: fc11c81670 (このIDを非表示/違反報告)
空太郎(プロフ) - のんのさん» 返信遅れてすみません。コメントありがとうございます!! (2019年11月28日 22時) (レス) id: fc11c81670 (このIDを非表示/違反報告)
smow - つ…続きが…気になり…ます…こ…更新…頑張って…ください…(バタッ (2019年11月5日 16時) (レス) id: a79ef504eb (このIDを非表示/違反報告)
のんの(プロフ) - とても面白いです!ステキな作品ありがとうございます!更新頑張って下さい! (2019年10月17日 21時) (レス) id: 56647d4dca (このIDを非表示/違反報告)
空太郎(プロフ) - ギルさん» コメントありがとうございます!!とても嬉しいです。十九話のは普通にこんなだったっけなーというテキトーの元書いたので、今ツッコマれて初めて気がつきました笑 (2019年8月7日 1時) (レス) id: fc11c81670 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空太郎 | 作成日時:2019年6月2日 11時