No.120 ずっと ページ32
「……金子？」
──光が少し漏れ込んだ廊下で、自分に倒れかかった人物。男──相擇消太の包帯の隙間から覗くのは、漆のような、少しのうねりもない黒髪。Aであるのを知るまで時間は取らなかった。
少ししか前が見えないが、Aが苦しんでいる事は一目瞭然で。まさか侵入者か、と考えたくもない可能性が脳裏をよぎる。倒れる前に誰かと話しているのが、俄かに聞こえていたからだ。
少なくとも、倒れる彼女を放って去っていったことから、良い人であるとは考え難かった。
(とにかく、金子を保健室に……)
が、抱えようとしても腕を固定されている自分ではまず無理だ。
Aのお陰だろうが、怪我の治りは異常に早い。恐らくは骨折を治すのではなく、全体の治りを早める事に重点を置いたのだろう。実際、もう殆ど治っていて、保険の為のギプスなのだ。
“薬剤”という個性は強力ではあるが、完全に傷を癒せるわけではない。そう便利な“個性”は存在しない。
どうする。包帯の巻かれた頭で思案する。この通路は会場の熱気が嘘のように静まり返っている。人が通りかかるのを期待はできない。
しかも、倒れるのは2回目だ。リカバリーガール曰く『原因に心当たりはない』と言っていたらしい。が、本当に事実を述べているのかよく分からなくなった。
Aと話していた人物もともかく、余りにも不透明な物事が多すぎる。相澤は頭を抱えたくなった。
「……ご、めん…………織田……」
今すぐにでも消えてしまいそうに儚い声で、目の前の彼女は呟いた。思わずAの顔がある下へと視線を向ける。Aは、自分を誰かと間違えている。ようやく自分の中で答えへと結びついた。
(……ずっと引っかかっていた)
初めてAと顔を合わせた時から、どうも不可解な点があった。異様な雰囲気をまとっていたのが一つだ。どことなく寂しげで、何かをずっと見つめているような。
それが相澤の声を聞いた瞬間、一気に強さを増したのを覚えている。
『……こ、え……』
そう、希望と絶望の混じった視線と、
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1142人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
( ･´ｰ･｀)どやｗ(プロフ) - 続編制作…！！！ありがとうございます！！桜さんがどのような方なのかめっちゃ気になって…！！(笑)ほんとうに更新が嬉しいのでまた続編まで行ってくれることに感謝しかなくて…！！！続編制作おめでとうございます！！ずっと応援してます！！！ (5月27日 11時) (
レス) @page50 id: 4e2cb1d965 (このIDを非表示/違反報告)
えぼし(プロフ) - ト、トガちゃん！弔くん！荼毘くんだーー！！敵連合だー！？ それに最後の女性は一体…？口調でもう分かる。めっさ綺麗。絶対、私この人に惚れる← 続きは気になりすぎる…。更新ゆっくり待ってます！ (5月20日 15時) (レス) id: 1767c8c0bb (このIDを非表示/違反報告)
みすゞ(プロフ) - コメント失礼します!いつも見ていますがやっぱりいつも夢中になって見れるので大好きな作品です。更新頑張ってください。 (4月26日 21時) (レス) @page46 id: d0ec094424 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメル - 更新待ってます！！ (2023年4月15日 22時) (レス) @page45 id: e229d579e8 (このIDを非表示/違反報告)
( ･´ｰ･｀)どやｗ＠ぐんぐんグルト(プロフ) - 久しぶりのコメント失礼致します！相澤さんの口から織田作の名前が…！！やっと…！！念願の織田呼び…！！(笑)凄く物語に引き込まれる感があって読むごとにやっぱり好きだなぁと言う感情が芽生えます(笑)他人がとやかく言うものではないですが更新頑張って下さい！！ (2023年4月6日 17時) (レス) @page44 id: 4e2cb1d965 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑞樹 | 作成日時：2022年11月14日 16時
