snow white〜第３章〜(inoo kei)

触れあう心　01 ページ19

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知念が白雪姫を抱きしめて
涙をこぼし続けていたのと同じ時刻

お妃さまはひとり
金色の鍵を握りしめていました




「大貴…」




この鍵を使い小部屋の扉を開ければ
そこにあるのは魔法の鏡

そしてその鏡の中には
お妃さまが愛する
たったひとりが住んでいます




「………っ。」




長く長く佇み続け、ようやく覚悟を決めて
お妃さまはゆっくりと鍵を回しました

扉が開く音と共に
小部屋の置くにある鏡が
ぼんやりと明るくなっていきます




「ただいま…大貴…」



「涼介…お帰りなさい…」





鏡の青年は
お妃さまの姿に息を飲みました

自らの罪にうちひしがれ
やつれ果てているにも関わらず
壮絶なまでに美しかったのです





「あのね…大貴…」





血の気の引いた唇が囁きます






「世界で一番美しいのは…だれ…？」






涼介…！



青年の心に
鋭いナイフが突き刺さりました

それはこの青年が
お妃さまの罪を知っていたからです





キミはそんなにまで、彼を愛したの？

彼の愛を独占したいがために
罪のない少女を傷付けるほど…






「お願い…答えてよ、大貴…」





冷たい鏡にすがり付きながら
お妃さまは祈ります




お願いだよ、大貴

世界で一番美しいのは俺だと…


お前がその目に映してるのは俺だけだと
一度でいいから聞かせてくれ…






「この世界で一番美しいのは…」






青年の声はまるで呻くように
低くしゃがれています

それでも…

どんな声でもいいから
自分の望む答えがほしくて
お妃さまは耳を澄ませました







「涼介…だよ…」


「大貴…！」






悲鳴のように自分を呼んで
泣き崩れたお妃さまを
届かないとわかっていても
抱きしめたいと青年は願いました


幼いころから見守り続け
今は深く愛している、ただ一人の女性を
悲しい恋から救いたくて



そしてお妃さまも
できないと知りながら
鏡に映る青年に抱きしめてもらえたらと
心から願いました


この後、ひとり旅立つ世界へ
その温もりを持っていけたら
どんな責め苦にも耐え抜けるから…と





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