snow white (inoo kei)

涙の理由　01 ページ41

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失ったものの大きさと
自分の罪にうちひしがれて
お妃さまはその時、寝室で過ごしていました




「圭人…」



昨夜から何度、この名前を呼んだでしょう

激しく深い愛を知って
それでも願いを変えられない自分を
お妃さまはひたすらに責めていました




「山田！！」


「！？」




ノックも無しに乱暴に扉が開かれ
お妃さまは慌てて涙を拭います

具合が悪いから…
と引きこもってはいたものの
涙まで見られては
何を聞かれるかわかりません




「藪くん…どうしたの？
この時間はまだ執務中じゃ…」


「それどころじゃねぇ！」




ツカツカとベッドに歩み寄った王さまは
お妃さまの背中を支えるように起こし
強く抱きしめました




「落ち着いて聞けよ…
＿＿＿＿＿っても無理だろうが…」


「藪くん…？」




来るときが来たんだ…


王さまの腕の中で
お妃さまは唇を噛みしめます




「圭人が…崖から落ちた。」


「…！！」




わかっていても耐えられなくて
衝撃にビクリと震えたお妃さま

そんな彼女のことを
王さまは心から哀れみました


生まれた国を離れて
王さまのもとへ嫁いできたお妃さま

そんなひとりぼっちの彼女にとって
馴染み深い圭人は
たとえ使用人とはいえ大切な存在だったはず




「いま、軍に捜索させてるが…
かなり高い急な崖なもんで難航してる。」




目撃者の証言によれば
それは一瞬の出来事だったそうです

いつものように獣を追いかけ
見事に撃ち抜かれたそれに気をとられ
彼から目を離した、その時

叫び声とともにその姿は消えていました




「言いたかねぇが、恐らく望みはない。
圭人のやつを見つけたとしても
この城まで連れてくるのは…無理だ。」




王さまやお妃さま
そして白雪姫が落ちたのなら
捜索は果てしなく続くでしょう

ですが一介の使用人である圭人の捜索に
そこまで人手は割けません




「それでもお前が望むなら
なんとしてでも連れてきてやる。
だから、お前が決めてくれ…」




哀れな女に残酷なことを言っている

それがわかっていても
為政者として
王さまにできるのはそこまででした




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