snow white (inoo kei)

ささやかれた真実　 ページ37

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その噂は
限られたごく一部の人々の間で
ひそかにささやかれていました




“お妃さまにご懐妊の気配がないのは
どうやら白雪姫のせいらしい”




この国に嫁がれて八年

国民の願いは叶うことなく
王さまにはいまだお世継ぎはいません




“王さまは白雪姫に夢中で
お妃さまと寝室を別にされているそうだ”


“あんな美女より娘をかい？
白雪姫さまも確かに美しいが…”




馬鹿げた噂だ…と
それを耳にするたびに
圭人は笑っていました

お妃さまの美貌を間近で見ていた彼にとって
遠目に見るだけの白雪姫など
多少整った顔をしている小娘にすぎません



あんな子供が涼介と並び称されるなんて
この国の人間は
よっぽど『白雪姫びいき』なんだな

第一、王さまと涼介は
パーティーの席で巡りあって
二人で結婚を決めるほど惹かれあったんだ

なのに寝室を別にするだなんて
あるわけないさ




お妃さまの幸せだけを願う圭人にとって
輝きを増していくその姿は
愛し愛される女性そのものでした

家族三人寄り添う姿も仲睦まじく
跡継ぎが生まれないと言う問題も
やがて時間が解決するはず


そう確信していた彼の目の前に
恐ろしい事実が突き付けられたのです




「涼介…じゃあ、王さまは白雪姫と…？」




圭人の問いに
お妃さまははっきりとうなずきます




「藪くんは俺を愛してないから。」




ならばこの八年
キミは耐えてきたのか？

故郷とは気候も風習も違う異国に嫁ぎ
愛する夫に裏切られながら
それでも彼を愛してきたと？




「いのちゃんが子供のままでいてくれたら…
俺…ずっとあの子を好きでいられたのに…」




涼介…

キミはなんて哀しい



この世の誰よりも美しく生まれ
大国の姫として幸せに育ち
誰もがうらやむ暮らしをしながら…



愛されない心を抱えて
今日まで生きてきたんだね…




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