snow white〜第６章〜(inoo kei)

白い花束をキミに 01 ページ16

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王さまの切ない胸の内とは裏腹に
それからの日々は
実に賑やかに過ぎて行きました

なにせ拐われたと思っていた姫が
元気に生きてる上に
大国の妃になったと知らされたのですから
国民たちは大喜び

姫の祝いにと
城には毎日のように贈り物が届きます




「………とんでもねーな、こりゃ。」




王宮の前に
急遽作られたテントを見て
王さまは呆れた声を出しました

そこには長蛇の列ができ
居並ぶ人々はみな笑顔です





「姫さまのご無事が
みな余程嬉しかったのでしょう。
参賀の列が絶えませぬ。」


「そうか…そんなにか…」





呟いたとき
王さまに向かって
小さな女の子が駆けて来ます

野原で摘んだと思われる花束を手に
その少女は満面の笑みを浮かべていました




「これ！ご無礼を！」

「よい。」




止めようとした兵士を制して
王さまはしゃがんで
少女と視線を合わせました

りんごのような真っ赤な頬に
優しく触れます




「それは、白雪への贈り物か？」

「うん！」




はい、と手渡されたそれは
百合でも薔薇でもありません

けれども王さまは
その小さな白い花を
とても美しいと思います





「アイツは花が好きだから喜ぶだろう。
祝いの言葉はあるか？」

「あるよ！
おめでとう姫さま、って。」

「必ず伝えよう。お前の名前は？」

「梨花だよ。
それとね…えっと…」




ごそごそとポケットを探り
少女はそこからあめ玉を取り出しました





「これは王さまに。
姫さまがお嫁に行っても泣かないでね？」

「……は？」

「梨花のとおさまは
梨花がお嫁に行ったら泣いちゃう
っていつも言うから。」

「………そうか。」




きっとこの子の父親は
冗談交じりにそう言ったのでしょう

けれど半分は本気で
だから少女もそれを覚えている


アイツもそうだろうか

ずっと側に居てほしいと願った俺の言葉も
アイツの中にあるのだろうか




「とおさまのこと、好きか？」

「大好き！」




大きな声で答えた少女を
王さまは優しく抱きしめました

きっと姫も
同じ問いに同じ答えを返すでしょう




なら、いいのかもしれない

だって娘と言うものは
どんなに愛しても
いずれは旅立つものなのだから…






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