JUMP徒然短編集〜BL version〜

04 ページ14

・





ー三年前ー





　いつもの如く、仕事明けに飲みに誘われて二人で酔っ払ってなんとなく訪れた藪の家。
　見るでも無しにつけてたテレビでたまたまやってた深夜ドラマが流行りのBLネタで、それに最初に食い付いたのは藪の方だった。



「男同士で恋愛ってなぁ…虚しくねーか？」



　ドラマの中では二人の主人公が互いの愛に気付いて、だけど互いに言い出せなくて葛藤してる。
　いかにもな設定で面白くも無いのに反応したのは……藪の油断、なんだろうな。



「虚しいって何が？好きなら相手にも振り向いて欲しいのが人情ってもんじゃない？」

「んー、でもよ、男と男じゃ子供もできねぇし、そもそも結婚もねーし…」

「子供や結婚が全てじゃないじゃん。」

「そりゃわかるけどよ…世間的にも同性愛ってのはアレだし…」



　ゴニョゴニョぼそぼそ、今夜の藪は酔っている。

　いつもなら誰にも気付かれないようにひた隠しにしてる本音が少しだけ溢れてるの、わかってないよね。



「世間から祝福されなくても構わない…とか、愛し合ってるから二人で居られればいいとか、美しいと思うけど？」

「や、そりゃ美しいだろーさ。でもよ、それはお互い気持ちがあれば…だろ？」

「まーね。一方的に恋してる立場なら、相手の将来とか考えちゃうよね。」

「だよなぁ…やっぱ惚れた奴には幸せになってもらいてぇもんな…」



　一般論のつもりで語ってる藪は気づいてないけど、俺にははっきりわかる。
　藪がいま頭の中に描いてるのは、たった一人の男の事だ。



「やぶぅがそんな事言うなんて意外かも。」

「は？お前の中の俺はどんだけ薄情なんだよ。」

「薄情なんて言ってないよ。ただ予想よりロマンチストだな、って。」

「ロマンチストぉ？んなこと言われたの初めてだぜ。」



　あはは、って笑ってグラスを空にして、おかわりを注ごうとボトルを傾けた直後に舌打ちする。



「もう空けちまったらしーや。新しいの持ってくるから待ってろ。」

「はぁい、よろしくー。」



　フラフラ立ち上がった藪の背中をじっと見つめても振り返ってなんかくれないのわかってる。

　お前はアイツの＿＿＿＿＿光の事しか見てないもんな…




・

05→←03

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す