その20 ページ23
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握りしめた手から感じる温もりは私を少し安心させた。
大きくて。
守ってくれて。
私をいつも慰めてくれる手。
何処に行くかも考えずに、ただ握った手を見つめていた。
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ふと、降谷の足が止まる。
そのまま私の足も止まって、手から目線を上げた。
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「……俺よりアイツの方がいいのか?」
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とても弱い声だった。
今にも消えそうな声。
前を向いたまま言った彼は私の手を少し強く握った。
降谷の顔は見えないけど、何故か泣いているような気がした。
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雨の音がやけに大きく聞こえる。
気まずくて目線を握られた手に戻した。
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「………私は。」
口から言葉が出る。
握られた手をもう片方の手で包み込む。
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「……私は…、降谷じゃなきゃ嫌…。」
目が熱くなる。
顔に雫が落ちるが、それが涙なのか雨なのかもわからない。
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少し彼がこちらを向いた。
目は合わせられない。
緊張と不安で握る手が力む。
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「…私は……
一緒にご飯を食べるのも、
帰りを待っててくれるのも、
何気ない日常を過ごしたいのも、
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…降谷とじゃなきゃ、嫌だよ……っ」
涙で声が裏返る。
俯いて涙と雨が落ちて行く。
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「ーっ」
握られた手を離され優しく抱きしめられる。
冷たい雨が嘘のように、彼は私を包み込んだ。
私は目を見開き硬直する。
降谷は顔を私の首筋に埋めた。
いつもは首に当たってくすぐったい髪の毛も、
濡れているせいか気にならなかった。
降谷の片手は私の後頭部を抑え、自身の体に押し付ける。
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「……俺だってお前とじゃなきゃ嫌だ。
お前なしで生きられなくなる事が怖いくらいに、
ずっと…お前に依存している。」
震えた声だった。
嬉しくて、涙が溢れた。
ポタポタと暖かい涙が降谷の服に落ちる。
私はその言葉に答えるように、
降谷の背中に腕を回した。
寒さで力が出ないけど必死で抱きついた。
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