混沌 ページ48
あれから数日、炭治郎は全集中の呼吸を常に保つ訓練を怠らなかった。
そして、あれ程びくともしなかった大きなひょうたんも...
「〜〜ッ‼〜ッ」
「炭治郎さん!頑張ってっ!」
バンッ!!
内圧で爆発したように砕け散ったひょうたんを見て、すみちゃん達も一緒になって喜んでくれた。
善逸から指摘はあったものの、正直言うと親切心で支えてくれる彼女達の事を炭治郎は無我には出来ず、状況は以前とあまり変わらなかった。
それを..まさかこんな形で後悔することになろうとは、思いもしなかった。
対カナヲ戦で順調に勝ち星を上げていく炭治郎。
残るは、薬湯をかけ合うあの反射訓練のみ。
残像すら残らないようなスピードで繰り広げられるそれに皆
そして
抜けたっ!
カナヲの手が湯呑みを押さえる前にそれを持ち上げる。いける!後はこれを彼女に向かって
コト...
炭治郎は持ち上げた湯呑みをカナヲの頭の上に静かに乗せた。さすがにこれを女の子にかけるのは理性が許さなかったのだ。だって、何度も浴びて思い続けてきたが、相当に臭いから。
きょとんとした表情で微動だにしないカナヲ。
周りは炭治郎の勝利に沸き立った。
ふとその場にいたA姉さんに目を向ける。しかし、彼女は笑ってはいなかった。
「っ....」
距離があるから、詳しい彼女の心情は匂いではわからなかったけど、無表情のA姉さんを見たのは、初めてかもしれない。どうしたというのか..
彼女も鬼ごっこは今日やっとカナヲに勝利していた。後は、この薬湯の掛け合いのみだ。
A姉さんは前へ歩み寄り、カナヲと向き合うように座ってぺこりと頭を下げた。
「宜しくお願いします。」
いつも通り変わらずニコニコとした笑みを浮かべているカナヲ。すみちゃん達の声援を受けて、いざ尋常に勝負が行われた。
彼女も炭治郎に負けず劣らずのスピードで、カナヲともほぼ互角だった。
これならいけるっ!
そう思ったけれど、カナヲが一瞬の隙をついて湯呑みを取り上げた。そうなってしまってはもう回避しようがない。
パシャンッ!!
容赦なくカナヲの薬湯がA姉さんへとかけられりる。頭からポタポタと液体を垂らして、俯いてしまった。たまらず炭治郎は彼女の元へと駆け寄る。
「A姉さん、大丈...」
肩をぐいと引いて表情を確認し言葉を失った。
彼女は....
大粒の涙を流し泣いていたのだ。
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八千代(プロフ) - Sun moonさん» ありがとうございます(*´-`)むいくんは天使 (2020年11月24日 20時) (レス) id: 23228d6fd7 (このIDを非表示/違反報告)
Sun moon - むいくんが可愛い(真顔) (2020年11月24日 17時) (レス) id: 73a4d7a977 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ゆずポンさん» 1話から見直してくださってるなんて...有難いです(;ω;)ありがとうございます!キャラの気持ちの変化だったり意識して書いてみてるので、何か違った発見がゆずポンさんの中であったらいいなぁと思います。 (2020年9月6日 15時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
ゆずポン - 八千代さん» そうですか!今1話から読み直してます。何回見ても面白ですね! (2020年9月6日 15時) (レス) id: 6633b9c75f (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ゆずポンさん» コメントありがとうございます。すみません、炎炎ノ消防隊はアニメ1、2話見た程度で全然詳しく無くて(泣)日本神話の神様なので結構色んな作品に使われてるようですね! (2020年9月6日 14時) (レス) id: 557e2177e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年2月4日 13時