22. ページ22
.
下ろした髪をサイドにまとめるように流して、さっきの雰囲気とはガラリと変わった彼女の姿にドキドキしてる。
「………」
「夜も蒸しますね。」
「…ですね…っ。」
なんだ俺。
会話下手くそか。
「…あ、あの方、」
「ーー？」
彼女が見た方に視線を移すと、走って戻ってきてるマネージャーの姿。
やばい。戻ってきた。
「…マネージャーさん、ですか？」
「はい。
イヤホン受け取ったんだと思います。」
あぁー。
俺はわざわざ車降りて声かけて、一体何がしたかったんだ。
マネージャーが来たら俺も帰らないと……。
もう会えない。
もう話せない。
変な焦りが心をざわつかせて、初めての感覚にひたすら戸惑う。
「……っ、」
「これからも体に気を付けて頑張ってくださいね！」
彼女の笑顔にキュンとする。
俺、たぶん、
彼女に惚れてる。
……これが一目惚れってやつ？
31歳にもなって初めての経験。
自分には無縁だと思ってた。
「…あのっ！」
「……？」
「連絡先とかって…教えてもらえませんか…？」
「…えっ？」
綺麗な瞳を大きく見開いて驚いてる。
「…私のですか？」
口元に手を当てながら控えめに笑う彼女は動揺してる。
そりゃそうだよな。
いきなり連絡先を聞いたりして、名刺渡す輩と何ら変わりないことしてる。
きっと彼氏だっているだろうし、俺の立場を知ってる彼女だからこそ「何言っちゃってんの？」って警戒されてるかも。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 259人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：珠美 | 作成日時：2021年6月18日 8時
