Chocolate Sling -2-

10 ページ10

.


俺からばかりだったけど、たまにAさんからも誘われるようになった。




大学にいても、Aさんから返信が来ると 無意識に頰が緩んでしまう。




《今日、バイト前に会える？》




「えっ！！」




思わず、声を上げてしまった。




「は？何？」




「あ…いや、」




「なぁんか怪しいな、最近…」




「っ、マジでなんでもないって！」




大学で同じ講義を受けてる奴らが、絶対なんかあっただろってうるさい。




うるさい･･･けど。




「…ふふ、」




「うっわ、気持ち悪。」




「つーか、ニヤけててもイケメンってとこがまた腹立つな！くっそー…」




なんとでも言えばいい。




今までの人生で、こんなに浮かれることなんてなかったと思う。




何をしていてもAさんのことばかり･･･




恋は盲目、という言葉がよく分かる。




.




「あっ、玉森くん！早かったね？」




はぁ、と白い息を吐くAさん。




鼻の頭がうっすら赤くなっている。




「あげる。」




「え、あ……ココア？」




「うん。寒かったでしょ？」




待たせちゃったからお詫びに、って･･･




ねぇAさん。




俺ね、待ち合わせ時間まで かなり余裕があったのに めちゃくちゃ急いで来たんだよ？




俺がAさんを待つことはあっても、俺がAさんを待たせるわけにはいかない。




こんな寒い中で 絶対待たせたりしないよ。




「…ごめん、甘いのやだった？」




「え？」




「あの…全然飲まないから、」




「あ、これは…」




Aさんが俺の為に･･･と思ったら、勿体なくて飲めないだよ。




･･･なんて、絶対言えない。




「玉森くん？」




「猫舌なんだよ俺、そろそろ飲めるかなぁ？……あちっ！！」




あまりの熱さに目をギュッと閉じた。




「えっ、大丈夫？」




「んー…火傷しちゃったかも、」




「嘘、どうしよう！」




「んふふ、嘘 (笑)」




「……。」




「もー…怒んないでよ、可愛いか…ら、」




うわわ、心の声が出ちゃった！




その場でうずくまりそうになるのをなんとか堪えて、ニコッて渾身の笑顔を浮かべる。




冷静を装って、内心バックバク。




「ふふ、怒ると可愛いって……なんか私、口説かれてるみたいじゃん。」




「……。」




「そろそろ行こ、遅刻しちゃう。」




「…うん、」




なんだろう･･･




今、さりげなく一線を引かれた気がする。

11→←9

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す