Chocolate Sling -2-

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「……出ない、」




何回か掛けたけど、Aは出なかった。




こうしてる間にも、刻一刻と時間は過ぎていってしまうわけで･･･




こうなったら ダッシュで帰って、即充電して、Aに連絡しよう。




それから、さっきの態度も、Aを置いて先に進んじゃったことも、全部謝るんだ。




せっかく浴衣着てきてくれたのに、素直に可愛いねって言ってあげられなくてごめん。




はぐれないように、ちゃんと手繋いでいけばよかったよね･･･




これからデートする時は、そうしよう。




よく考えたら、外で手繋いで歩く･･･なんてこともほとんどなかったし。




今すぐAに会いたい。




会って、思いっきり抱き締めたい･･･




家に帰り着くまで、俺の頭の中はAのことでいっぱいだった。




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「…え、」




〈ごめんね、はぐれちゃった。〉




〈これに気付いたら先に帰ってていいよ。無理言って付き合わせてごめんなさい。〉




会場からここまでの時間を合わせると、優に30分くらいは経っていた。




先に帰っていい、と書いてある。




なら Aも帰った･･･？




"一旦家に帰ってもいい？"




"色々用意したいし、洗濯物とか昨日の分出来てないから……"




"そしたら夜、そのままここに帰って来れるかなぁって…"




「……。」




･････それか、怒って自分の家に･･･




エアコンはもうとっくに効き始めているはずなのに、嫌な汗が額を流れた。




もし･･･




もし、まだ会場にいたとしたら。




ぶつかってきたくせに謝りもしない奴や、ナンパ目的であちこち彷徨(うろつ)いてる奴。




さっきまでの光景が鮮明に思い出され、震える手でAに電話を繋げた。




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「…………っ、なんで出ないんだよ…！」




何度も、何度もコールした。




ラインも数え切れないほど送った。




通知を見たらきっと驚くよね。




多分、もう何十件も送っちゃってる。




何が大丈夫なんだよ。




Aは女の子で、あんな場所に1人残していいはずがなかったのに。




今更気付くなんて、自分の馬鹿さ加減には 呆れるだけじゃ足りない。




A･･･ごめんね。




本当にごめん、すぐ行くから。




だから待っててよ･･･？



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電話は諦めて、タクシーを呼んだ。




タクシーを待ってる間のたった10分が、30分にも、1時間にも感じた。

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