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5話 ページ10

「さぁ…どうしよう…」

ここから出るには鉄格子を壊さなくてはならない。
紗奈は魔法使いだが、自分の魔力を目的の事に変換するには魔法道具が必要なのだ。

本来なら紗奈達4人はいつも杖を持っている。
だが、ここに来たときに確認してみたら、なくなっていたのだ。

その時何かがひらひらと鉄格子の隙間から入ってきた。掌を広げればそのひらひらしたものは自分の手の中に収まる。
それは緑色のリボンだった。

「んー…?紗奈…?」

足元を見れば起きたばかりのセンラが目を擦っている。

「…真月から…。
…うらたと居るらしい。

……‼
そうか忘れてた…リボン!」

服に通していたリボンを解く。
そう、これは魔法道具の1つ。
紗奈たちの最終手段の道具でもある。
自分の黄色いリボンを額に近づけ、魔力をこめる。

緑のリボンはそのままひらひらとどこかに飛んでいってしまった。多分他のメンバーのところに行っただろう。

『センラと一緒の部屋。私は無事。
私…契約を結んだの。貧血状態にもならないから、結構楽だし運動神経も上がるらしいしね。抜け出すまで利用させてもらう。』

そうメッセージをリボンに魔力とともに込めた。

「みんなへ…送って。」

そう言うと、黄色のリボンは鉄格子を抜けていった。

赤色のリボンも飛んできて、水穂は無事、そして坂田と一緒にいることもわかった。

「紫姫からの連絡が来ない…。」

彼女色のリボン…紫のリボンはいつになっても来ない。

志麻、紫姫で一緒にいるはずなのだが…。

「…大丈夫や。まーしぃはそんなに弱くないで。
紫姫もまーしぃと一緒なら…大丈夫。」

センラが紗奈に放ったその言葉は、ストンと紗奈のなかに落ちた。
それを聞くとなんだか安心するような気がした。

「そう…だね。」

そして自分の体がこわばっていたことに気づき、全身の力を抜いた。

「もしかしたら、まだ、寝てるかも…」

紗奈は自分を安心させるためにポツリと呟いた。

そんな不安に揺れている紗奈をセンラは見つめていた。






紗奈には大丈夫だと言ったが、正直言って保証は無い。いつも一緒にいる自分らならわかる。
今の4人の中でも、吸血鬼の中でも、まーしぃは血を結構飲む方だ。

「(飲み殺してしまっても…おかしくは無い…んよなぁ…)」

気づけば自分の手は紗奈の頭の上に伸びていて、撫でれば、紗奈は驚いた目を向けつつ、少し安心しているような気がした。

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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2020年12月8日 21時

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