2話 ページ6
紗奈が目を覚ませば、水穂が顔を心配そうに覗き込んでいた。
「大丈夫…?紗奈。」
周りを見渡してみれば、警察官4人、水穂達3人もちゃんといる。
「大丈夫」と紗奈は返そうとしたが右手の自由がきかない。ちらっとそっちの方を見てみると、手が誰かと紐で繋がれていた。
相手は警察だった。
さっきの茶髪だ。
「はぁ…。で、あなたたちもこうなってるって事は警察の仕業じゃないってことね。」
他の3人は繋がれていないのに、何故自分と彼だけ繋がれているのか、紗奈にはわからなかった。
だが、この程度簡単に抜け出せる。
紗奈は関節を外し、紐を解いて自分の手を抜く。
「で?警察の皆様。ここはどこかわかります?」
茶髪の方を向くと呆れ顔で答えられる。
「わかるわけないだろ。
…聞いたことあるのは情報ぐらいだ。
お前ら以外に新しい怪盗がでたらしい。
もしそいつらの仕業なら、邪魔なお前らを消そうとしたんだろ。…しかも近くに特別警察官がいるんだ。それすらも脅威になりかねないからおまけで連れてきた、って感じだろうな。」
真月は「すごい名推理だこと。」と彼を睨んだ。
彼も真月を睨み返す。
「当たり〜!」
バン!と、奥のドアが開き、そこに現れたのはドレスを着た女だった。
「全て合ってるわよ。
警察官さん。」
檻の向こう側からニコニコと笑いながら話している彼女を見るとイライラする。
警察官の奴らも「なんだこいつは」と言いたげな顔をしていた。
彼女は紗奈達のご飯を持ってきてくれたみたいだが誰も口をつけない。
何が入っているか分からないからだ。
そんな彼女たちを見て目の前にいた女はつまらなかったのかそのまま出て行ってしまった。
「大丈夫…。毒はないみたい。」
水穂はすべての料理を嗅いでいた。
嗅覚が鋭いのだ。
「そう、なら…食べよ。」
スープをスプーンで口に含めば口の中にコンソメの味が広がった。だが、警察官は誰1人として運ばれてきた料理を食べようとはしなかった。
紗奈は横目で警察官を見ながら言った。
「で?警察官さん。
あなた方は食べなくても大丈夫なんでしょうけど…。どれぐらいの頻度で血を飲まなければいけませんか?」
「何故それを聞く?」
紫髪の奴が反応した。
「一応、私は人間なので。
あなた達が血を飲まなくて貧血状態にでもなって私たちの事を襲いかねませんから。
最低限なら血あげますよ。」
その言葉が想定外だったのか、警察官は目を見開いて驚いた。
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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2020年12月8日 21時