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23話 ページ31

「怪盗どもめ…無駄な抵抗はするな…!」

「(やっぱりか…)」

罠だと、紗奈は分かっていた。
勿論…自分を捕らえるための。

馬鹿馬鹿しい。なんでこんな事を。
未成年魔女4人と特別警察官に振り回される大人…笑っちゃう。

すると、ピリ、と紗奈の肌が感じた。
全身が粟立ち、とたんに紗奈は動けなくなってしまった。

真月も同じようで動かない。

『うらた、センラは変化は何も無い。
…これ、魔力だ。でも、こんな魔力を放ったまま?』

頭の良い魔法使いなら使わない。
放っていれば魔力を早く消耗して戦えなくなるのは目に見えている。
しかも、強い。強すぎる。
普通の魔法使いなら倒れていた。

「まぁ、これで倒れない魔法使いなんて何年ぶりかしら。」

警備員が道を開き始め、そこに立っていたのは、中年の女性。
だがスタイルも良く、髪も綺麗。
だが2人はそれよりもこれが気になった。

「銀色の髪の魔法使い…。」

真月が呟いた。

昔から銀髪の魔法使いは強いとされている。
だからこそ重要な役割を持つことが多い。
こんな悪の道に走るような事は考えられない。

「そうよ。
この際、種明かしをしましょうか。
私がここを取り仕切る人間。【エルド】。
いつもご飯を運んでいたあの女は、別の目的があって私に使えてくれてるの。知っているわよね?」

聞いたことある名前に紗奈の顔がさぁっと青ざめる。

信じたくない。
嘘だ。何かの手違いだ。

「ふふ、分かったみたいね。サナ。
私は【エルダ】の妹。もちろん…サナ、あなたたちを育てたあのエルダよ。」

エルドは右手を口元に持ってきて、ニタリと笑う。
そして、紗奈の手元を指差した。

「私の目的はそれだけよ…渡しなさい。サナ、ムーン。それを。その杖を。」

杖を握る手に力を込めた。

渡さない。渡すはずがない。
杖は魔法使いの命同然のもの。

「なら…取引しましょうか?」

エルドが、パチンと指を鳴らしたかと思うと、画面が浮かび上がった。
そこに写っていたのは、見覚えのある紫色の長い髪。

(紫姫():ひめ)…⁉」

うずくまり、部屋で倒れている。

「あぁ…可哀想に。あのヴァンパイア2人も強かった。彩夢も。
…だけども、私の魔法には…。叶わないみたいだねぇ…。」

エルドは憐れむ目でその画面を見る。

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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2020年12月8日 21時

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