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16話 ページ23

「苦しかった…!怖くてたまらなかった!」

紗奈は苦しみを吐き出した。
その目からはボロボロと涙が溢れ出しベッドの上にシミを作っていた。

「今でも吸血鬼はちゃんと信じきれているわけじゃないよ…。
本当は…センラの目の前にいるのも怖くてたまらない。ずっと強がってただけ…。本当は怖くて怖くてたまらない…。」


「紗奈…!」

センラは強く、だが優しく、紗奈を抱きしめた。

ここ1ヵ月(目安だが)センラはこんなに弱々しい紗奈を初めて見た。
本当は自分も恐怖の対象だったのにもかかわらず、自分の牙を受け入れていたと考えると…相当勇気が必要だったはずだ。



「せんら…ごめんね。」

ポツリと紗奈がつぶやいた一言が、センラにはよくわからなかった。

「なんで、あやまるん?」

紗奈はその答えは言わなかった。

だがずっと、センラの腕の中で子供のように泣きじゃくっていた。

センラは心地の良いリズムで紗奈の背中をさすっていた。
しばらくして、寝息が聞こえてきてまたベッドへと戻した。


*・゜゚・*:.。..。.:*・':*・゜゚・*・*:.。. .。.:*・゜゚・*


「これでも…紗奈は普通の女のコなんやな…」

涙の跡がついている紗奈は、もしかしたらあの吸血鬼の家に行かなければ幸せに暮らしていたのかもしれない。
こんな怪盗になって命の危険をさらすこともなかったはずだ。

そして、自由に恋もできたかもしれない。


センラはまたあの時と同じキスを額にした。


「普通、なら…紗奈に恋しても大丈夫なんかな?」

でも…叶うはずがない。
彼女は吸血鬼(自分)のことが苦手なのだから。
嫌いなのだから…。

神様…もし願いが叶うなら…。

「俺を人間にして…」

好きな子を…見守れる。
血を啜らないと生きていけないこのような姿じゃなく…。

か弱くて、彼女と同じ、人間にしてほしい…。

もし人間だったとしても断られる可能性はある。
それでも、彼女に怖がられないものにして欲しかった。

「紗奈…」

その時、センラの頬に一筋温かいものがつたり、落ちた。

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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2020年12月8日 21時

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