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『(空が……美しい……)』
ただ空を見ただけなのに、何故こうも涙が出るのか。いつも見ている空なのに。ここに来て2週間がたった。いまだに解けない"監視"、たまに感じる視線と殺気ーー。最初は声が戻ったらここを出ていくと決めていた。だけど、半助や伊作、五年生たちの優しさにふれていくたび、自分の気持ちが揺らいでしまう。五年生たちも、始めは襲ってきた。だが、和解したらとても良い子達で優しい子達なのだ。
そして、Aは思った。
"ここを離れたくない。他の生徒達の笑顔を、取り戻したい"とーー。まだ会ったこともないが、半助達の話によると、皆、心に傷を負っているらしい。その傷を癒してあげたい、とAはそう思った。そんなことを考えていると、上に影が出来た。
「何してるんですか、こんなところで」
『「…………勘』」
五年い組の尾浜勘右衛門が上からのぞいていた。"勘"とはAがつけた愛称である。嫌々だが、本人は了承してくれた。
『「勘、助けてくれ。出れなくなった」』
「はぁ………。待っててくださいね、Aさん。今、はしご持ってきます」
そう言って勘右衛門はその場を離れた。"Aさん"も勘右衛門がつけた愛称だ。Aは素直にそれに応じた。勘右衛門はあの事件以降、一度もAの部屋に訪れていない。やはり"首謀者"であり、"張本人"だからなのか、はたまた何を気にしているのか………。以前、廊下ですれ違った時にAは言ったのだ。
"気にしてない。勘右衛門も遊びに来て良いんだよ"と………。
『(無理なのかな……。勘と仲良くなるのは……)』
膝をかかえて丸くなる。上からはしごがおりてきて、勘右衛門が顔をのぞかせてこちらを見ていた。
「それに登ってください」
『「ありがとう」』
ゆっくり、ゆっくり、はしごを登る。落ちないように。Aはようやく外に出た。少し切ない気持ちになったが、それでも広い場所に出た時の解放感はなんとも言えなかった。
『「ありがとな、勘。助かったよ」』
「どういたしまして。て言うか、Aさん。また外に出てたんですか?しかも"無断"で。土井先生にしかられますよ」
『「そ、そこは内緒にしてくれ」』
「どうしよっかなー」

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れな(プロフ) - めちゃくちゃ面白いですし続きが気になります!またお時間がある時に更新してもらえると嬉しいです!楽しみにしています! (2022年3月31日 12時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 今晩は、初めて読みました!続きがすごく気になります! (2021年1月29日 17時) (レス) id: d1dc2ada9f (このIDを非表示/違反報告)
ななつのうみ(プロフ) - 美音さん» ご指摘ありがとうございます。なんとなく分かりました。これからもご指摘、よろしくお願いします。 (2018年2月5日 9時) (レス) id: 2454d6f77d (このIDを非表示/違反報告)
美音(プロフ) - 分かりずらかったらごめんなさい。後、応援してます! (2018年2月5日 1時) (レス) id: 7b5522f86f (このIDを非表示/違反報告)
美音(プロフ) - お気に入り登録させていただきました!作者さんって自分の名前を入れる時に(名前)にしてますか?してるんなら、変えた方がいいですよ。占ツクには元々自分の名前を書く欄があって、そこに名前を入れてると(名前)の中にその文字が自動的に入るので…。 (2018年2月5日 1時) (レス) id: 7b5522f86f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななつのうみ | 作成日時:2018年1月19日 10時