第4話[三郎と勘右衛門と特別な笛] ページ25
「はい、Aさん。これ、兵助が作った豆腐菓子。渡してくれって」
『「ありがとう、三郎」』
五年生の襲撃から1週間が過ぎた。あれから半助の命令で、Aの部屋は五年生長屋の一番端の部屋に移動した。それからと言うもの、Aの部屋には五年生が遊びに来るようになった。
「この顔は、私の後輩の黒木庄左ヱ門。で、これは今福彦四郎。で、これがAさんね」
『「すごいなぁ、三郎は。私そっくりに変装出来るんだから」』
「Aさんの顔は特徴がないから変装しやすいんだ」
『「おい。聞き捨てならないぞ」』
「あはははっ‼」
三郎は襲撃の翌日からAの部屋に遊びに来ていた。Aが誘ったわけではない。三郎自らの意志なのだ。何故こうしてるのか自分にも分からない。ただ、三郎は思う。"もっとAのことを知りたい""もっとAのそばにいたい"と………。
「あの、Aさん………」
『「ん?なんだ?」』
「Aさん、こっちに来てずっと一人なんですよね………。あの、寂しくないんですか?」
『「………………」』
三郎の質問に、Aは黙ってしまった。ここに来て約2週間。「寂しくないか」と言えば寂しいし、友人に会いたいと思う。泣き虫で、さみしがり屋なあの子に………。だが、Aは今の自分の気持ちを正直に三郎に話した。
『「まぁ、寂しいと言えば嘘じゃない。だけど、半助さんや伊作、お前達もいるからな。楽しいよ。充実してる」』
「そう………ですか………」
そう言うAの顔が少し寂しそうに見えた。そのあと三郎はAと会話をして部屋を出た。
「はぁ……」
トボトボと廊下を歩く。最後の質問はやはりまずかっただろうか。純粋に今のAの気持ちを知りたかっただけなのだ。半助の言う通り、Aは今までの女性とは全然違う。あたたかくて優しくて、太陽みたいに自分を照らしてくれる。
ガラ……
「お帰り、三郎」
「ただいま、雷蔵」

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れな(プロフ) - めちゃくちゃ面白いですし続きが気になります!またお時間がある時に更新してもらえると嬉しいです!楽しみにしています! (2022年3月31日 12時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 今晩は、初めて読みました!続きがすごく気になります! (2021年1月29日 17時) (レス) id: d1dc2ada9f (このIDを非表示/違反報告)
ななつのうみ(プロフ) - 美音さん» ご指摘ありがとうございます。なんとなく分かりました。これからもご指摘、よろしくお願いします。 (2018年2月5日 9時) (レス) id: 2454d6f77d (このIDを非表示/違反報告)
美音(プロフ) - 分かりずらかったらごめんなさい。後、応援してます! (2018年2月5日 1時) (レス) id: 7b5522f86f (このIDを非表示/違反報告)
美音(プロフ) - お気に入り登録させていただきました!作者さんって自分の名前を入れる時に(名前)にしてますか?してるんなら、変えた方がいいですよ。占ツクには元々自分の名前を書く欄があって、そこに名前を入れてると(名前)の中にその文字が自動的に入るので…。 (2018年2月5日 1時) (レス) id: 7b5522f86f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななつのうみ | 作成日時:2018年1月19日 10時