レンタル彼女【桃】

episode : 1 ページ3

あれから何十回 , 何百回と写真を見てもやっぱり元カノだ .




ついに今日は予約当日だ , 今更キャンセルなんて出来ない .

こうなる事ならきちんと女の子を見て選ぶんだった .




でも , 何故か俺はAが好きだった服装を選んでいた .

Aが好きだった服装に , 髪型 , 香水 .




何してんだ俺 , 気持ち悪ぃ .








「 ちょっと早かったか 」








待ち合わせ場所は駅前の噴水 .

季節は肌寒く , 水周りは特に冷えた .




何度もAがこの服を着た俺を抱き締めてくれた .

そんな思い出深いニットに顔を埋める .




… Aは , どんな服装で来るのだろうか .




予約時には
「その方が好きな服装で大丈夫です」
そう伝えた .




きっとあっちも予約客が俺だってわかっている筈だ .

同姓同名で , 電話番号も変わっていない .
きっと , 気付いてる筈だ .




俺は昔 , Aが着ていた服装で1番好きな服装があった .

Aは黒いニットのワンピースがとびきり似合う女性で , 大人らしい彼女が俺は誇らしかったし大好きだった .




別れて数年経つ今ですら , 思い出せるくらい .




もし , あっちが俺だと気付いていて , まだ俺に少しでも気があるのなら .

その服装で着てくれる可能性は0では無いんじゃないか .




何て馬鹿らしい事を考えながら携帯を触っていると , 気付けば約束の時間 .




それらしき人は … , と辺りを見回すと突然背後から肩を叩かれた .








「 さとみさん , ですか ? 」








嗚呼 , 何回聞いたか分からないこの透き通った声 .

毎朝この声で起こしてくれてたんだっけ .




この先 , ずっと忘れる筈ないその声の持ち主の方を振り向けば , 俺は唖然口を開くことしか出来なかった .








「 … A 」







「 由美です 」







「 そっか , そういう感じか 」








綺麗に巻かれたミディアム程の髪の毛に , 絵に書いたような白肌 .

誰が見ても「整った顔をしている」そう言っても過言じゃない程の美人 .




そして , 俺が過去に唯一嫌いと言った

白いレースのワンピース .




そういう , ことか .








「 じゃあ , 由美さん

今日は宜しくお願いします 」








寂しさを隠しながらも , 笑顔でそう彼女に挨拶をすればAは少し悩む顔をしてこう言った .








「 … さとみだけ , 特別

Aって呼んでいいよ 」








嗚呼 , そうやって落としてから期待させる癖は昔から変わってないんだね .

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