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第六十一話【ダンテ】 ページ12

何かが割れる音がした。

心臓が跳ねる。

もしや足元の魔石が割られたのではないかと不安になる。
そんな事許せるわけが無い、あってはならない。

霧が揺れた。
自分から離れて動きを止めたのが1人、その後から遅れて横に移動し続けているのが1人。

足音も、布ズレの音もさせないように滑らかに動きを止めた方との距離を詰める。
歩みを進める度に呼吸は浅くなり、相反するように霧は更に濃くなっていく。

もう彼女の視界は霧の動きも視認出来ないほど真っ白だろう。
そうなればどれだけ照らしても誕生日ケーキの蝋燭の様に息を吹きかけても意味は無い。

「なんで水晶を壊した後に動いちゃったのかな……?」

彼女の呼吸により霧の揺らぎが感じられる程近くに来ていた。
突然僕が接近した事で驚いただろうか、否、彼女はそんな事では動じない。

「この僕が、他人なんかに、勝利を譲る訳がないでしょ?」

この時僕は、驚く程冷静だった。
勝敗なんてそっちのけで会長さんにそう言い聞かせていた。
頭に血が上っているのか、何も感じていないのかなんて最早判断がつかなかった。

「割らなくて良いの?負けちゃうよ?」

途端に抜け切っていた体温が、無くなっていた手の感覚が一気に戻るのを感じた。
何を言っているんだ此奴は、僕が一気に2つ壊す可能性だってあるのに。
なんで微動だにしない?
まるで勝ちを譲るような_______

「ねぇ会長さん、また今度僕と勝負してよ」

クリスタルを1つ握り潰し、愛嬌たっぷりの笑顔を何も見えていない相手に送る。

「いいよ!ただしそうやって猫被るの止めてくれたらね?」

「分かった!約束ね!」

試合終了のブザーが鳴り響き、視界の黒いモヤが消えた。
試合の動向を追えなかった観客席からは、僕に対するブーイングの声がいくつか聞こえてきた。
お互いに握手を交わし、アッサリと退場する。

次の目標が決まったからだ。
誰が見ても分かるような圧倒的優位に立ちながら、誰が見ても分かるようにアイツに"勝ち"を、譲ってやろう。
これからの僕の黒星は、それだけにしてやる。

第六十二話【黒姫】→←第六十話【雪白】



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雪白(プロフ) - ブラックアイさん» ダメな場合は日時を決めましょう (2019年1月19日 18時) (レス) id: acba558d74 (このIDを非表示/違反報告)
雪白(プロフ) - ブラックアイさん» 今なら大丈夫です! (2019年1月19日 17時) (レス) id: acba558d74 (このIDを非表示/違反報告)
ブラックアイ - 日と時間決めますか? (2019年1月19日 17時) (レス) id: b64c02d5d7 (このIDを非表示/違反報告)
雪白(プロフ) - ブラックアイさん» ごめんなさい見てませんでした!次はしっかり見ておきます!! (2019年1月16日 20時) (レス) id: acba558d74 (このIDを非表示/違反報告)
ブラックアイ - 雪白さん» パスワードお願いします! (2019年1月16日 17時) (レス) id: b64c02d5d7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪白 x他5人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/  
作成日時:2018年10月23日 19時

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