▼敵対する策の裏 ページ17
俺がそう言ったのを黙って聞いていた指揮官は、不意に自身の上着に手を伸ばした。その外套の内側から取り出された重そうな銃。
何をするつもりなのか、おおかた予想はつくが____
指揮官はその銃口を俺の足に向けた。
運が悪ければ多量出血で死ぬ場所。
即死させる気は無いらしい。
ゆっくりと此方を見た指揮官の目に何が写っているのか。丁度鉄格子と被ってしまって、この位置では見えない。
『ひとつ問おう、総統様』
カチャリと下に落とす。
『今ここで、私に撃たれて静かにその時を待つのと、
二日後にある"建国記念の式典"で公開処刑されるの
どちらがお好みで？』
どちらを選んでも悪魔の様な選択肢。
建国記念日に殺されるのも、今この場で撃たれるのも死に代わりは無い。正直、どちらでも良いのだが___
gr「そんな事を聞きに来たのか」
『そんな事、って何だ。私は冗談抜きで聞きに来たんだよ。貴方の人生の最後を決める為に』
gr「俺はクズ連中に殺される予定はないぞ」
いつもの調子で返してやれば、
諦めた様に短くため息を吐いた指揮官。
それは紛れも無い苦労人の何かで、俺が計り知れぬ程の大きな何かを抱えているんだろう。
『あのね、』と前置きを置いた指揮官は、
銃口を俺の足から、足に繋がれた鎖に向けた。
『助ける義理は無い筈なんだけど、
初めて意思が合った記念として___』
ﾊﾟﾝｯという高い銃声。
嗅ぎ慣れた硝煙の独特の煙たさ。
『贈り物だよ。
有り難く受け取れ』
次いでという風に牢の中に投げ入れられたのは本では無く、ひとつの鍵だった。
何のつもりか聞こうと顔を上げれば、ふっと碧色の澄んだ瞳と目が合った。此奴の目をしっかり見たのは初めてだが、中々綺麗じゃないか。
『私はクズが大嫌いでね。どうする？助けてあげようか。一人で此処を抜けるのと、
確実に脱出出来る人間を連れて行くのと、
どちらが良い？』
ひんやりとした空気の中、頬に生温い赤色が流れる。
いくら気を遣って鎖を撃っても弾が被弾するのは避けれないもの。
この狭い空間なら尚更だった。
gr「言われずとも、俺はお前を連れ帰る」
少し伸びたであろう髪の下から不敵に笑って返せば、
楽しそうに笑う指揮官の顔が、漸く見えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1484人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「wrwrd」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
零(プロフ) - kouboukunさん» ありがとうございます！そう言って頂けると嬉しいです！多分は基本的に危なそうだな…という勝手な想像に共感してくれている様で何よりです…()これからも更新頑張ります！ (2020年5月24日 18時) (
レス) id: c17c74b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
kouboukun(プロフ) - なんかこれを見て思いました・・・。総統の多分は危ない多分ですね(*´▽｀*)面白かったです！すごく夢中になって読める小説だし、奥が深くて、好きです！（突然の告白。）これからも更新頑張ってください！！ (2020年5月20日 16時) (レス) id: 6b5d77f9d6 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - seruharu217さん» syp君についてはまだ出て一話目ですので、情報量が少なかった様ですみません…次の話辺りからもう少し詳しくするつもりですので、その際分かるかと…！（質問に添えていなかったら申し訳無い）ありがとうございます！そう言って頂けると嬉しいです！頑張ります！ (2020年5月15日 23時) (レス) id: c17c74b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - もっちさん» ありがとうございます！今や社会はその話題で持ちきりですしね…無事元の暮らしが出来る事を祈るばかりです。今後も面白い作品に出来る様、更新頑張っていきます！ (2020年5月15日 23時) (レス) id: c17c74b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
seruharu217(プロフ) - あの、すみません。ショッピ君ってどんな立場ですか？二人いる感じなんですかね・・・？このお話は好きです！更新頑張ってください！ (2020年5月13日 17時) (レス) id: e769def405 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：零
| 作成日時：2020年3月15日 14時
