#呼び名と記憶 ページ8
空いた席には太宰さんが座る。定位置が決まっている私達は何時も其処に座っていた。
織「今日は太宰の奴来ないのか?」
『来て欲しいんですか?』
織「いや…………珍しいと思ってな」
坂「嗚呼、太宰君なら中原幹部に連れ攫われてましたよ」
若しかして長期任務って太宰さんもだったのか。炭酸を一口飲めば、甘酸っぱい香りが広がる。マスターが気を利かせて出してくれたビターチョコレヰトが妙に苦い。
作戦参謀なのに全然覚えてないや。
坂「確か今回の件の参謀はAさんでしたよね」
『へっ、あっ!うん』
いきなりの話のフリに声が上擦る。それを見た織田さんは何故かふっと笑う。
安吾さんは呆れた様に私の前にあったビターチョコレヰトを取って食べた。私のなのに。
坂「忘れたんですか…はぁ。まぁ善いですけど、貴女頭脳戦は無駄に長けてますもんね」
『安吾さん程じゃ無いですよ、私よく眠れてるし』
坂「へぇ?嫌味ですか」
『いひゃいよ安吾さん』
私の頰を軽く抓る安吾さん。
成る程、それなら太宰さんが来ないのも納得だな。じゃぁ明日明後日は五月蝿い輩二人とも居ないのか。
ふと、織田さんが私を見て首を傾げた。私も安吾さんも如何かしたのかと吹き出してしまった。
そんな彼から出たのは意外な質問で
織「何でAは安吾だけ名前呼び何だ?」
安吾さんは思い切りお酒を吹き出した。
そんな質問をジト目で見る安吾さんだが、特に意味は無い。
___坂「安吾でいいです、その方が呼び慣れてますので」___
初対面とは思えぬ程の笑顔で彼は私にそう云った。
昔の記憶をぼんやりと思い出しながらその事を話せば織田さんは「なら俺も」と名前呼びを懇願してくる。
『作之助さん?…うーん、やっぱり織田作さんか』
織「それが善いな」
坂「矢張り織田作さんは織田作さんですね」
妙に納得して頷く三人。
今夜は太宰さんがいない。珍しく私と安吾さんと織田さんで飲んでいる。
他愛も無い話を。
一つ彼の席を空けたまで。
最下級構成員に参謀に幹部、そして私。
普通なら巡り合うのすら不思議すぎるこの面子で__
あと何度此処に集えるのだろうか。
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★ayaka★(プロフ) - 面白かったです。すれ違いながらも互いを思ってるって良い話でした。 (2019年10月31日 1時) (レス) id: 65fd904e63 (このIDを非表示/違反報告)
燐華(プロフ) - 作品、29件ほど表示されましたよ。私の方では正常ですね (2019年9月8日 8時) (レス) id: 7838562921 (このIDを非表示/違反報告)
鏡の国のアリス - 完結(?)おめでとうございます!私此の作品だいっすきです!応援してます!お疲れ様でした。 (2019年9月7日 16時) (レス) id: f685bf0ca1 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - 赤珠さん» ご報告ありがとうございます!申し訳ない、ホムペ利用小説が未公開になってました……()公開しました! (2019年9月3日 22時) (レス) id: c17c74b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - すみかさん» ご報告ありがとうございます。他の作品もですか……本当に嬉しい限りです、ありがとうございます!!! (2019年9月3日 22時) (レス) id: c17c74b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:零 | 作成日時:2019年8月14日 16時