#最期の決意 ページ31
ーAsideー
人気の無い階段をゆっくりと降りていけば、其処には静かな場所が広がる。木の下まで真っ直ぐ降りて歩く。
今日は風が気持ちいい。そうは思わないですか？
______織田作さん
彼のお墓の前に座ってぼんやりと名前を見る。其処には確かに彼の名前がローマ字で彫られていた。
数年前まで生きていたのに、言葉を交わして、噂で聞く事が多かったけど、そんな彼とはもう会えない。
分かっている。人は脆い。それ故に何時かは命が尽きる。
死ぬのは人生のゴールじゃなくて、生きる事の延長線上。誰もが通り過ぎるその道を彼は辿っただけだ。分かっているのに、頭はその事実を理解して欲しく無いらしい。
『織田作さん。中也が幹部になりましたよ』
誰かが答えてくれる訳でも無いのに、一人話しかける。声が聞こえれば良いのになんて莫迦げた事を考えながら。
『小さい癖に、私の方が先輩なんですけどね
あ、そうだ。太宰さんは彼方側の世界で楽しそうにやってますよ。
相変わらずの爽やかさで毎日死にたがってます。そろそろ止めれば良いのに…
私も最近面白い事を見つけてさ！
前に話した近所の猫の話なんだけど___』
他愛も無い話をひたすらに話す。じゃないと壊れてしまいそうだった。足元からぐらっと揺れて全部が落ちる。
死んだらもう誰からの記憶からもいなくなる。
それが何時も怖かった。死んだ奴の事は忘れられない、なんて云うけれど人一人死んだところで世界の何が変わる訳でもない。
人気の政治家が死んだところでこの国の政治は変わらない。
あぁ、彼奴も終わったのかって当たり前の様に記憶から忘れ去られる。死とは程遠い此方の世界が嫌いになりそうだ。
『そろそろ帰るね。織田作さん』
そう云って立ち上がる。
区切りをつけよう。
大丈夫、私は強くなったんだ。また来るとは云わなかった。そしたら此処に縋ってしまいそうだから。
立ち上がって来た道を戻る。
辺りはまだ明るい。眩しいくらいに。
刹那、強い風が辺りを覆う。周りより低いこの場所は風が吹き抜けるんだろう。
『今日は快晴だなぁ』
ふと、後ろに視線がして振り向く。
______嗚呼
そこには、誰もいない。
ただ、一輪の花だけが確かに揺れていた。
.
Fin.
前作へ続く
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★ayaka★(プロフ) - 面白かったです。すれ違いながらも互いを思ってるって良い話でした。 (2019年10月31日 1時) (
レス) id: 65fd904e63 (このIDを非表示/違反報告)
燐華(プロフ) - 作品、29件ほど表示されましたよ。私の方では正常ですね (2019年9月8日 8時) (レス) id: 7838562921 (このIDを非表示/違反報告)
鏡の国のアリス - 完結(？)おめでとうございます！私此の作品だいっすきです！応援してます！お疲れ様でした。 (2019年9月7日 16時) (レス) id: f685bf0ca1 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - 赤珠さん» ご報告ありがとうございます！申し訳ない、ホムペ利用小説が未公開になってました……()公開しました！ (2019年9月3日 22時) (レス) id: c17c74b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - すみかさん» ご報告ありがとうございます。他の作品もですか……本当に嬉しい限りです、ありがとうございます！！！ (2019年9月3日 22時) (レス) id: c17c74b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：零
| 作成日時：2019年8月14日 16時
