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岡崎side
恵さんに出会う前の私は、父が経営している工場の手伝いをしていた
まだ30代だった若い頃の話だ
力仕事がほとんどなため男性の従業員しかいなかったその工場に恵さんがやって来たのは今から考えればもう5年も前の話になる
「こちらで働かせていただきたいんです。」
こんな錆びれた工場で働くのは到底似合わない綺麗な方だった
当然、父も採用するかどうか悩んでいた
でも、当時工場は人手不足で、しかも働きたいと言ってくれる人がやってくることなんて滅多にないことだった
父はとりあえず様子見という形で仮採用したのだった
普通なら女の人にはキツイ仕事も恵さんは難なくやり遂げた
肉体的には相当の負担だったと思う
でも、彼女は何か大きな目的があって働いているように見えた
従業員のほとんどは中年男性である中、私と恵さんは歳が近かったこともあってよく話す仲になった
そんなある日の休憩時間
休憩室に入るとそこには恵さんしかおらず
そして彼女は１枚の写真を愛おしそうに眺めていた
瞳が大きくて恵さんに似た男の子の写真だった
私情をあまり語らない恵さんにとっては
聞かれたくないことだったかもしれないが、聞かずにはいられなかった
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作者名：紫陽花
| 作成日時：2019年3月9日 15時
