巌窟王とマスターとコーヒーと ☆ ページ11
(入寮後の話)
コトリ。軽い音を立てて、目の前に何かが置かれたのが分かった。うつ伏せていた重い頭を無理やり起こせば、目線の先には湯気を立てるマグカップ。鼻腔をくすぐるのは芳ばしい香り。これはコーヒーか。
そして、僅かにタバコの匂いも漂ってきた。この銘柄のタバコを吸うのは、うちのサーヴァントの中で１人しかいない。
顔を彼の方向に向けて、わたしはその名前を呼んだ。
「がんくつおう」
「…なんだ、我がマスターはまだ寝ぼけているのか？」
窓の縁に座るように立つのは、巌窟王＿＿エドモン＝ダンテス。またはアヴェンジャー。足首辺りでクロスするように投げ出された長い脚は、いつものように黒い服で覆われている。窓から差し込む月光が、彼の銀髪を煌々と照らした。
「風邪をひくぞ」
「……だって、疲れたんだもん」
「寝るのはいいが、せめて自室に戻れ」
「むり。いますごいしんどいもん、共犯者なら分かってよ」
疲れた、というのは本当だ。実際、指一本動かすのも億劫なほど疲れている。だが、目の前のマグカップから漂う、誘うような香りに耐えきれずにそれを煽る。熱くもなく冷めてもない、ちょうどいい温度に小さくため息をついた。
ここは食堂である。
訓練終わりに、疲れた体を引きずってこの部屋に入ったのは覚えている。なにか温かい飲み物でも飲もうと思ったのだ。お湯を沸かす間だけ、と椅子に座り、机に伏せて＿＿そしてそのまま、寝てしまったらしい。
この部屋を照らすのは、必要最低限の蛍光灯だけ。暗い部屋では、月光に光る銀の髪が良く映えた。それが綺麗だな、と、副流煙を撒き散らす男の顔をぼうっと見つめた。
「共犯者なら＿＿か。そうだな。気付かずに失礼した」
「え、なに…うわ！？」
そう言って彼は、窓の方からこちらへ一直線に向かってくる。長い脚だからリーチもでかい。ぼけっとしている間に、巌窟王はわたしの隣へ来たと思ったら、ひょいとわたしの体を抱き上げた。思わず変な声が出る。
「自室までお連れしますよ、
「……どうも、ムッシュー」
気障ったらしいセリフに、そう返せば、なにが面白いのか彼は、あの特徴的な笑い方で笑った。
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闇音(プロフ) - 初めまして。こちらのシリーズのお話、いつも楽しく読ませていただいています。ジーク君と1日デートするというリクエストは可能でしょうか？本編ならびに番外編も更新を楽しみにしています。 (2020年3月28日 1時) (
レス) id: f425466021 (このIDを非表示/違反報告)
牛乳(プロフ) - いつもぜんざいさんの小説を楽しく読ませて頂いてます(>_<)すみませんリクエストなのですが、キングプロテアちゃんと夢主ちゃんとA組のお話が見たいです…！更新楽しみにしてます！ (2019年4月25日 20時) (レス) id: 2e7f27e19e (このIDを非表示/違反報告)
リリカ(プロフ) - こんにちは！いつも楽しみにしてます！ リクエストで岡田以蔵と夢主とA組の話をお願いします！ (2019年1月4日 9時) (レス) id: 317858aab0 (このIDを非表示/違反報告)
ジャンヌオルタサンタリリィ - 初めまして！インド兄弟楽しみです！それからリクエストよろしいでしょうか？私はロビンとビリーが取り合うのがいいです！ (2018年10月11日 17時) (レス) id: 9d73ceb014 (このIDを非表示/違反報告)
夜ト(プロフ) - インド兄弟の続き楽しみにしています！更新頑張ってください！ (2018年10月6日 16時) (レス) id: fa8e26fbdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぜんざい | 作成日時：2018年5月27日 11時
