127話▼煙は形を変えて ページ31
▼アマンド視点
Aがナッツ島にいる光景も、だいぶ見慣れてきた。
もう彼女と出会って3年目。
時の流れというものはあっという間ね。
勤務の休憩時間、私は新しいタバコを咥えた。
家族の中には──特に小さい弟や妹達は、この匂いを嫌がる子もいる。
けれどこの子は、どうやら嫌ではないようなのだ。
だからなのか、いやそれは理由にはならないだろうけど。
どこか懐かしむような……目を細めてぼぅっとしているAの横顔を見て、私は思わず声をかけてしまった。
「1本、要る？」
『！』
彼女はひどく驚いた顔をする。
そしてその後、少し悩む仕草をして……
『……そんじゃ、お言葉に甘えて』
Aはヘラリと笑ってそう答えた。
『不思議な味ですね』
煙を吐きながらそう呟く彼女。
タバコは吸わないらしいけど、とても様になっている。
「一応バニラ風味だけど。そんなに珍しい味でもないわ」
『ありゃーそうなんですか。
言っても自分、タバコ吸ったのこれで2度目なんですけどね』
"アハハ！"と人懐こい笑顔を浮かべるAに、こちらも釣られて口角が上がる。
この子は人を笑顔にする力があるようだ。
この2年と少しで、私はそれを体感してきた。
プリンの件も……はじめは少し心配してたけど、どういう形か丸く収まったようだし。
「美味しい？」
『……マズいというワケではないですけど。
"リピートはなし"って感じですかね』
「……そう」
『でも、今日吸えて良かったです』
Aはどこか嬉しそうにそう言った。
「どういうこと？」
『タバコってあんま良い印象なかったもんで。
ここで吸えて、少し思い出を上書き出来たかなって』
「……」
『な〜んて、プリン様みたいなこと言っ……
……すんません。何でもなかったです。
まぁ要は、タバコ慣れしちゃ
"よっ世界イチ！"と目の前で自画自賛をしている彼女を、私は小さく笑ってやる。
良かった。
何があったのかは詳しく聞く気はないけれど、2人は上手くいってるようね。
もう心配は要らないみたい。
「不味ければ捨てて良いのよ」
『……もぉ少し堪能させてもらいますわ』
「そう」
私とA、2人揃って煙を吐く。
口から離れたソレは各々に、自由自在に形を変える。
『ゲホ！』
「大丈夫？」
『……吸うのにコツ要りますね、コレ』
彼女はタバコの煙がよく似合う。
またいつか、一緒に一服出来る日が来たりするのかしら。
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なめこ(プロフ) - 万さん» 万様、温かいコメントをありがとうございます！駄洒落は割と丁寧に作ってたのでそう言って頂けると嬉しいです。引き続きマイペースで頑張っていきます！ (2022年9月30日 19時) (
レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
万(プロフ) - 初めまして、設定も珍しく内容もとっても面白かったので一気に読んでしまいました！！主人公の駄洒落もついつい楽しみにしている自分がいました！今後も応援しています。 (2022年9月30日 0時) (レス) @page50 id: b14a1161fa (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» 橋本アリィちゃん様、感想ありがとうございます！また返信遅くなり申し訳ございません。今後もマイペースに作品更新していくので、よろしくお願いします！最後までのご清覧、本当にありがとうございました！ (2022年9月10日 13時) (レス) @page19 id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します！とても良いお話でした！今後も頑張って下さい！(*´ω｀*) (2022年1月5日 11時) (レス) @page50 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 烏羽Pさん» 鳥羽P様、ありがとうございます！この作品で少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。今後も自分のペースで作品投稿を続けていくつもりなので、どうぞよろしくお願い致します。改めまして、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました！ (2020年12月29日 13時) (レス) id: 64cb88d55b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なめこ | 作成日時：2020年10月30日 18時
