39話▽潜入のすゝめ ページ41
暦は4月。
エニエスロビーの外では桜が咲く季節だ。
「Aー！」
1階、迎賓フロア。
給仕室から淹れたてコーヒー入りのポットを持ち歩いていると、名前を呼び止められた。
『カク！ハットリちゃん！
……ルッチさんも！』
「ポッポー！」
「……」
「わしらも任務帰りでこれから指令室に行くんじゃ」
カクはそう言うと、自然と私の横に並んで歩く。
彼を挟んでルッチさんが、その肩にハットリちゃん。
ここはそこそこ階数がある。
指令室は6階……つまりそれまで一緒に駄弁りつつ歩くということ。
(……ルッチさんと！)
「のうA、何かルッチにできそうな"潜入スタイル"を思いついたりせんか？」
『潜入スタイル？』
無駄に緊張の糸を張り詰めていると、カクから朗らかに問われる。
潜入……って、潜入捜査とかのアレ？
なんかすっごく諜報部員っぽい！
「いや実はな。今日わしらとカリファ、それにブルーノの4人に長期潜入指令が……」
「おい、機密事項だ」
「Aもどうせ知らされるわい。
とにかく、他3人はまだしもルッチは堅物じゃからの。
"人当たりの良いみんなの人気者"を演じるワケにもいかんのじゃ」
ルッチさんに頭をガシリと鷲掴みされて"イデデデ！"と呻くカク。
手の甲に浮き出る血管を見るに、おそらく本気でやっていらっしゃる……！
要はルッチさんの"世を忍ぶ仮の姿"を模索中ってことだな。
たしかに普段の彼を見ていると、はっちゃけた感じのキャラは想像つかないというか。
……見たくないというか。
『でも……周りの人の信頼を得るためには、ある程度親しみやすい感じが必要だもんね』
「そうなんじゃよ〜そこが難しくてな」
「別にお前らの助言など求めていない」
本当にこの人はッッッ……！
絶対今みたいな本性出ちゃうから黙ってた方が良いよ！
いっそハットリちゃんを介して、日中は"鳩語"で喋ってもらってた方がまだマシ……
(……いや、案外良いのでは？それ)
『"腹話術師"って設定はどう！？』
「腹話術？」
「クルッポ！？」
『"ハットリちゃんが本体"っていうテイで、ルッチさんは基本喋らないでもらって！
腹話術師なら結構人気出そうだし……』
──何より、流石にハットリちゃんには"死ね"とか"消えろ"とか言わせないでしょ！
これで言葉遣いもマイルドになるんじゃないかなぁ！？
「論外だ。そんな間抜けな真似おれがすると思うか？」
『なッ、腹話術は全然間抜けじゃ……イタタタタ！！！』
「こりゃコーヒー淹れ直しじゃのう」
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なめこ(プロフ) - I r°さん» ありがとうございます！これからも自分のペースで更新頑張らせていただきます！ (2020年12月6日 10時) (
レス) id: 64cb88d55b (このIDを非表示/違反報告)
I r°(プロフ) - すごく好きです！これからも頑張ってください！！ (2020年12月5日 15時) (レス) id: e50f3d6e93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なめこ | 作成日時：2020年11月12日 21時
